北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさん(行方不明時13歳)の母早紀江さん(88)が4日、川崎市内で報道陣の取材に応じた。めぐみさんの父滋さんが亡くなって5日で4年。拉致問題が進展しない現状に早紀江さんは「こんなに悔しいことがあるのかと毎日思っている」と憤った。
滋さんは87歳で亡くなった。早紀江さんは自宅のリビングで、滋さんの遺影に話しかけるのが日課となっている。最近は「なんでこんな大事なことなのに、ちっとも状況が動かないんだろうね」とため息をつきながら話しかけるという。
滋さんは、めぐみさんが拉致された20年後の1997年に結成した拉致被害者家族会の初代代表に就くなど、拉致被害者の救出に向けて取り組んでいた。「泣き虫だけど一生懸命な人。子どもたちにも優しく、めぐみちゃんを本当に大事にしていた」。早紀江さんは滋さんの人柄をそう語る。
心の支えだった夫を失い、「亡くなった当初は頑張らなくちゃという気持ちも強かったが、状況が動かないことへのむなしい思いと、滋さんが二度と戻ってこないという思いが交錯し、寂寥(せきりょう)感みたいなものが強くなっている」と心境を吐露した。
今年は、モンゴルでめぐみさんの娘キム・ウンギョンさん(36)一家と面会してから10年となった。早紀江さんは当時の滋さんを「にこにこして本当にうれしそうな顔をしていた」と懐かしそうに振り返った。
そしてウンギョンさんとの再会について「会いたいと思うが我慢はできる。めぐみちゃんの姿が見えないことが一番悔しい」と話した。
今年はまた、拉致被害者らの再調査の開始などを盛り込んだ「ストックホルム合意」からも10年がたった。だが2016年に北朝鮮は一方的に再調査の中止を宣言し、その後、日朝間の公式協議は実施されていない。
早紀江さんは「一つ一つのことに希望を持ってきたが、なんの前進もない」と肩を落とし、「こんなに長い年月が過ぎても拉致問題を解決できないのはおかしい。いつもいつも振り回されている」と語った。
そして政府に対し、「北朝鮮で苦労して待っている人を救い出すことは日本の大きな仕事だ。何でもいいから明らかにしてほしい」と訴えた。【木下翔太郎】
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