バスの車内に子供が置き去りにされていないかを検知する装置を開発した村田製作所(京都府長岡京市)が、実証実験に協力した滋賀県野洲市に装置を贈呈した。全国で相次いだ送迎バスの園児置き去り事故対策として注目を集めている。【礒野健一】
2021年7月に福岡県中間市で、22年9月に静岡県牧之原市で園児が送迎バスに置き去りにされ熱中症で死亡する事故が起きた。国は同年12月に置き去り防止を支援する安全装置の設置を義務づけるガイドラインを策定した。
野洲市でも同年3月に中主幼稚園(同市吉地)の送迎バスで、園児が残っていたことに気付かないまま車庫に戻る事故が発生。大事には至らなかったが、市は置き去り防止装置の必要性を痛感し、市内に事業所を構える村田製作所がWi-Fi(ワイファイ)電波を活用した検知システムを研究していることを知り、協力を要請。同年11月から実証実験を実施してきた。
検知装置は、バス車内の前後に電波を送受信する機器を設置。エンジン停止後にセンサーが作動し、車内に子供がいることを検知するとバスのブザーが鳴る。同時にあらかじめ設定しておいた幼稚園や教育委員会などの連絡先に、置き去り発生の通知が届くようになっている。Wi-Fi電波は送受信機同士で複数の経路を通るため、その間に動くものがあれば検知が容易で、子供の呼吸程度の小さな動きでも検知するという。一方、車外で動くものには反応しないよう、設置位置や感度を実証実験を繰り返して調整した。
野洲市の送迎バスには昨年10月から、エンジン停止後に車内後方でブザーが鳴り、運転手が後方まで移動して手動でブザーを止め、前方に戻りながら子供の置き去りがないか確認するシステムが導入されている。村田製作所の装置を導入することで二重のチェック体制となり、中主幼稚園の北林理恵教務主任は「園児の降車確認は厳密にやっているが、ヒューマンエラーは起きるものと考えているので、最先端技術がサポートしてくれるのはありがたい」と話した。
3日にあった贈呈式で栢木進市長は「地元ゆかりの企業が野洲の子供たちを温かく見守ってくれることに感謝する。重大事故につながる前に、いち早く異常を察知してほしい」と感謝した。村田製作所野洲事業所の今西浩之所長は「地域貢献ができてうれしい。装置は今後、乗用車用に開発と普及を進め、不幸な事故が一つでもなくなるよう働きかけをしていきたい」と述べた。
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