左手を冷感紙、右手を普通の紙の上に置いた際の熱分布画像。赤いほうが温度が高い=愛媛県紙産業技術センター提供

 愛媛県の紙産業技術センター(四国中央市)と繊維産業技術センター(今治市)は、触るとひんやりと冷たさを感じる新素材の紙「冷感紙」を開発した。地球温暖化の影響で夏の猛暑が続く中、マスクや寝具などで「冷感商品」が好調なことを受け、新たにティッシュペーパーや壁紙などにも生かす。冷感紙を細く切って糸状にし、ひんやりした感触のタオルなど織物製品に加工することも検討する。

 冷感紙とその加工技術は、繊維産業技術センターで6、7日に開かれた研究成果展示会で発表された。両センターによると、触って冷たく感じる素材は熱伝導率、熱拡散率が高く、肌から生地に瞬間的に熱が移動することで冷感が得られる。そこで、冷感性能に特化して既に商品化された冷感繊維(高密度ポリエチレン繊維)とパルプを混合してすき込んだ紙「冷感紙」を試作した。詳しい混合比を示すことはできないが、冷感繊維は数十%の割合という。

パルプ100%の紙(左)と、冷感繊維を混ぜた紙(右)。右下は冷感繊維=愛媛県今治市で2024年6月6日、松倉展人撮影

 繊維製品の接触冷感性の評価方法はJIS規格で定められており、数値が高いほど冷たい。通常、冷たく感じる目安の数値は0・2とされる。パルプ100%の紙は0・2であるのに対し、今回開発した冷感紙は0・3で、「ひんやり感」は1・5倍だった。

 国内の紙需要は縮小する傾向にあり、新たな市場開発が急がれる。両センターは知恵を絞りながら「冷たい紙製品」の開拓を目指す。【松倉展人】

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