天皇、皇后両陛下は22日から国賓として英国を訪問される。歓迎行事やチャールズ国王夫妻主催の晩さん会に出席するほか、両陛下が留学されたオックスフォード大の訪問などが予定されている。皇室、王室とも代替わりを経たうえでの今回の親善訪問は、日英両国の絆をさらに深める機会となる。

天皇が国賓として訪英するのは1971年の昭和天皇、98年の上皇さまに続き26年ぶり3度目。天皇陛下の国際親善のための海外訪問は昨年のインドネシア以来、2カ国目となる。

訪英は当初、エリザベス女王の招待を受けて2020年春に予定されていたが、新型コロナウイルス禍の影響で延期された。今年に入りチャールズ国王から改めて招待があった。

英王室にとっては、2月に国王ががんと診断されたことを公表した後、初の国賓となる。

宮内庁によると、両陛下は22日に東京を出発。23、24日は日本側が設定した非公式日程として天皇陛下が、日本文化の発信拠点「ジャパン・ハウス」や、テムズ川にある可動式の防潮堤を視察される。陛下は水の研究をライフワークとし、オックスフォード大留学時、テムズ川の水運を研究された。

国賓としての公式行事は25日から3日間予定されている。

同日、ウィリアム皇太子が両陛下の宿泊ホテルに迎えに訪れ、ロンドン中心街のホースガーズ(騎馬衛兵の本部)で歓迎式典を開催。夜にはバッキンガム宮殿でチャールズ国王夫妻が主催する晩さん会が開かれ、国王のスピーチや天皇陛下の答辞が予定されている。

翌26日は生命科学研究所「フランシス・クリック研究所」を訪問。夜にシティー・オブ・ロンドン市長主催の晩さん会が催される。

両陛下は27日に国王夫妻に別れのあいさつをされ、公式行事は終了する。通例では公式行事の期間中に英首相との昼食会があるが、今回は見送られた。7月4日に英下院の総選挙があり、宮内庁幹部は「選挙に影響を及ぼすことがないよう英側が配慮した」とみる。

以降は再び非公式日程となり、天皇陛下はエリザベス女王や夫のフィリップ殿下の墓を訪れて供花される。宮内庁によると、陛下の希望を受けたものだという。昭和天皇や上皇さまも訪れた王立キュー植物園も見学される。

28日にロンドンを離れ、両陛下が学んだオックスフォード大を訪問し、帰国の途に就かれる。東京に到着されるのは翌29日になる。

皇后さまは現地で休養日などを設け体調を整えられる。

皇室と英王室の交流は1869年、ビクトリア女王の次男、アルフレッド王子が来日し、明治天皇が歓待したことをきっかけに始まった。第2次世界大戦で一時途絶えたものの、戦後、皇室と王室は交流を徐々に再開。両国の関係改善に寄与することになった。

エリザベス女王は1998年、在位中だった上皇ご夫妻をバッキンガム宮殿に招いた晩さん会で「英国は、日本にとって晴れの日だけの友人ではなく、本当の友人です」と両国関係をたたえた。

天皇陛下とチャールズ国王も、交流は40年以上に及ぶ。陛下は83年から2年間、オックスフォード大に留学。当時の思い出をつづった著書「テムズとともに」に、当時皇太子だったチャールズ国王とともに、オペラの鑑賞に行った思い出など親しいやり取りがあったことをつづられている。

宮内庁幹部は今回の訪問について、「皇室と王室には長い歴史があるが、戦後生まれの2人の登場により、若い世代や環境問題といった『未来志向』という観点で両国関係は語られるのではないか」と話した。(近藤彰俊)

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