神戸地裁、神戸簡裁が入る庁舎

 兵庫県稲美町で2021年、住宅が放火され小学生の兄弟が死亡した事件で、加害者が親族であることを理由に犯罪被害者給付金を減額した県公安委員会の決定は違憲、違法だとして、兄弟の両親が県を相手取り、決定取り消しを求める訴えを神戸地裁に起こした。代理人弁護士によると、同様の訴訟は珍しいという。

 事件は、兄弟の伯父で殺人罪などに問われた松尾留与(とめよ)被告(54)=1審・同地裁姫路支部で有罪判決=が21年11月19日、妹夫婦ら4人と暮らす木造2階建て住宅に混合ガソリンをまいて放火。小学6年の侑城(ゆうき)さん(当時12歳)と1年の眞輝(まさき)さん(同7歳)を急性一酸化炭素中毒で殺害した。

 訴えでは、両親は22年8月、県公安委に給付金を申請したが、被告が3親等内の親族であることから算定額の3分の1に減額され、計約200万円の支給が決まった。

 減額は犯罪被害者等給付金支給法に規定されているが、原告側は「金額に3倍もの差異を設けることに合理的な理由は存在しない」と、法の下の平等を定めた憲法に違反すると主張。また、兄弟と被告は同居はしていたものの交流がない状態だったため、減額の例外規定に当たるとしている。

 18日に第1回口頭弁論があり、県側は請求棄却を求めた。給付金の実務を担当する県警は「犯罪被害者給付金の裁定は、法令にのっとり適正に判断されたと考えている」とのコメントを出した。

 松尾被告は1審判決で懲役30年を言い渡されたが、量刑を不服として検察側が控訴した。【大野航太郎】

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