9歳以下の子どもがベランダなどから転落する死亡事故が2023年までの31年間に170件あったことが20日、消費者安全調査委員会(消費者事故調)の調査で分かった。0〜4歳児の事故が8割を占め、親が近くにいても防ぎきれないケースが多かった。消費者事故調は海外の取り組みなども参考に対策を検討している。

ベランダでの事故が103件で最も多く、6割を占めた。次いで窓からの転落が47件で、合計で全体の9割に上った。椅子やエアコンの室外機、ベッドなどを足場に柵をよじ登ったり、窓を開けたりして転落した事例が多かった。

6歳未満の未就学児の死亡事故に絞って分析したところ、ベランダからの転落91件の3割は大人の在宅時に発生していた。窓からの42件も8割は大人が在宅中で、大人がそばにいても事故が起きている現状が浮き彫りになった。

消費者事故調は23年6月に調査を始めた。対策のひとつとして議論されているのが、防犯用製品である「補助錠」の活用だ。外部からの侵入を防ぐ用途で販売されているが、子どもが窓を開けたりベランダに出たりするのを防げる可能性がある。

23年3月に2歳の双子男児がマンション7階から転落死した名古屋市は事故を受け、5歳以下の子どもがいる世帯に補助錠を配り始めた。同市によると、約7万9000世帯に配布する予定。

他にも子どもが窓を開けたことを検知し、大人に知らせる方策も検討中だ。監視カメラやセンサーなどの機器の活用方法や使用上の課題について確認している。

海外では転落防止に向けてハード面の対策を整備している先行事例もある。消費者事故調によると、米ニューヨーク市は子どもが住む集合住宅に窓ガードの設置を法令で義務付けている。集合住宅のオーナーは入居する家族に子どもがいるかを契約時に確認し、窓ガードのメンテナンスの必要性を確認しなければならないという。

消費者事故調は海外の取り組みや市販製品の有効性などを踏まえ、窓とベランダに分けて対策や周知方法を検討し、年内にも報告書をまとめる方針だ。中川丈久委員長は「事故の発生後に保護者を責めるのではなく、ハード対策を普及徹底することが必要だ」と強調している。

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