悪質な脱税事件を摘発する全国の国税局査察部、通称「マルサ」が21日、2023年度に暴いた脱税の手口を公開した。巧妙化する手口に、マルサは「一罰百戒」を掲げて対策を進めている。
一見、何の変哲もない小屋の天井の点検口を開くと、天井裏には断熱材が敷き詰められていた。よくある天井断熱。
しかし、不審に思った「マルサ」が断熱材をくまなく調べると、隙間から縦横25センチ程度の金属製の箱が。
テープで厳重に封をされた蓋を開くと、中には帯をつけられた一万円札がぎっしり。
同様の箱が3つ見つかり、この小屋からは現金総額1億1200万円が押収された。
国税庁によると、2023年度は101件を検察庁に告発。脱税総額は計約89億円にのぼった。
前年度よりそれぞれ2件、約10億円減少したが新型コロナの影響による移動制限など、調査に制約のあった2020~2021年度より増加しており、コロナ禍以前とほぼ同水準に戻っている。また、国税庁が告発した事案で、昨年度の一審判決は83件あり、その全てが有罪判決だったという。
脱税による不正資金は、あの手この手で隠されていた。
2023年度は、天井裏や階段下収納、蔵に置かれた木箱、銀行の貸金庫から、それぞれ現金が約8600万~約2億4600万円見つかった。
既に使われていたケースも多く、高級車の購入や有価証券等への投資、暗号資産の購入、競馬や海外カジノ、ネットカジノなどがあったという。
手口の巧妙化も進んでいる。
2024年3月には、脱税のために虚偽の経費を計上するノウハウを「節税」とうたい、顧客らに脱税をさせていた、いわゆる「脱税請負人」が告発された。同じ高級腕時計のシリアルナンバーを何度も使用したり、不正に入手したパスポートの写しを用いたりして、書類を偽造し、不正に消費税の還付を受けたケースもあったという。
こうした手口の巧妙化に、国税庁調査査察部の高松忠介・査察課長は「近年の課題は『デジタル化』と『国際化』への対応だ」と指摘する。
SNSなどの普及で、脱税のノウハウが広まりやすくなったことに加え、デジタル空間などに残る脱税の証拠が増えたことから、膨大なデータの中から必要な情報を特定する能力が求められるようになった。海外取引が増加していることから、外国の租税法などにも精通する必要性が出てきているという。
マルサでは、デジタル技術を訓練するチームの整備や、海外の税務当局との租税条約に基づいた情報交換制度の活用など、対策を進めている。
高松課長は「査察の仕事の狙いは、悪質な脱税をしていた人に刑事責任を追及することで、多くの納税者に注意を促す『一罰百戒』。今後も厳格な証拠収集をした上で、告発を進めていきたい」と話している。
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