札幌地裁=岸川弘明撮影

 「娘の心がこれ以上壊れないようにと考えていた」

 札幌市の繁華街・ススキノのホテルで会社員男性(当時62歳)を殺害し頭部を切断したとして、無職の田村瑠奈被告(30)ら親子3人が殺人などの罪で起訴された事件で、死体遺棄ほう助と死体損壊ほう助の罪に問われた母浩子被告(61)の公判が開かれた1日。父で精神科医の修被告(60)が証人として札幌地裁に出廷し、事件の約10年前から娘を叱ることができなくなった経緯などを語った。

 修被告は白髪まじりの坊主頭で出廷。弁護人から遺族への思いを問われると数秒間天井を見上げ「言葉ではとても言い尽くせませんが、取り返しのつかない大変なことになってしまい、とても申し訳ないです」と謝罪した。

 瑠奈被告との生活について修被告は「時折興奮する娘の精神が追い詰められていくのを見るのは怖く、つらくて心配だった」と言及した。修被告の証言によると、瑠奈被告は数カ月に1度、両親の前で「生きているのも苦しい」「早く死にたい」と感情を爆発させた。措置入院や医療保護入院も検討したが「他害ではなく、自傷も持続しない。強制ではなく、本人なりになんとかしたいという文脈で(通院や治療を)導入しないといけないと考えていた」と語った。

 弁護人の横で背筋を伸ばして座っていた浩子被告は、尋問を終えて退廷する修被告と目を合わせると涙ぐんで小さくうなずき、ハンカチで目元を拭った。

 この日、検察側が読み上げた供述調書の中で、被害男性の妻は「私たちにとっては家族を大事にしてくれる、良い夫で、良い父親でした」と述べ、男性の姉も「人を楽しませるのが好きな優しい弟。なぜ殺されたのか真実が知りたい」と訴えた。【伊藤遥、後藤佳怜】

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