旧優生保護法を憲法違反と判断した3日の最高裁大法廷の判決要旨は次の通り。

【旧法の違憲性】

不妊手術は、生殖能力の喪失という重大な結果をもたらす身体への侵襲であり、不妊手術を強制することは憲法13条の保障する「自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由」に対する重大な制約だ。旧法は個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反する。

憲法14条1項は差別的取り扱いを禁じている。特定の障害者を不妊手術の対象と定めて区別することは、合理的な根拠に基づかない差別的取り扱いだ。旧法は憲法13条、14条1項に違反していた。旧法の内容は国民に憲法上保障された権利を違法に侵害することが明白で、国会議員の立法行為は違法だ。

国は約48年もの長期間、特定の障害者を差別して重大な犠牲を求める施策を実施してきた。優生手術の際には身体の拘束、麻酔薬の使用や、うそをつくことも許される場合があるという通知を出して優生手術を積極的に推進した。少なくとも約2万5千人もの人が重大な被害を受けた。国の責任は極めて重大だ。

損害を受けた人に、損害賠償請求権の行使を期待するのは極めて困難だった。1996年に旧法の規定が削除された後は、国会で速やかに補償の措置を講じることが強く期待されていたのに、国は長期間、補償はしないという立場を取り続けてきた。訴訟が起こされた後に一時金支給法が施行されたが、内容は一時金320万円を支給するにとどまるものだった。

以上から、除斥期間の経過後に提訴したことだけを理由に、国が賠償責任を免れることは著しく正義・公平の理念に反し、到底容認できない。

【除斥期間に関する判例変更】

改正前の民法724条後段は不法行為で発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めた規定で、除斥期間の経過により賠償請求権は法律上当然に消滅する。ただ「除斥期間が経過したという主張が信義則違反または権利乱用だ、という主張は失当」という89年の最高裁判決の法理を維持した場合、今回のような事案で容認できない結果をもたらすことになりかねない。

裁判所が除斥期間の経過により賠償請求権が消滅したと判断するには、当事者の主張がなければならないと解すべきだ。賠償請求権の消滅が容認できない場合には、裁判所は、除斥期間が経過したという主張が信義則に反し、または権利の乱用として許されない、と判断できると解するのが相当だ。89年判決、その他の最高裁判例はいずれも変更すべきだ。

今回、国が除斥期間の経過を主張することは信義則に反し、権利の乱用として許されない。

【個別意見】

▽三浦守裁判官の補足意見

今回の事案の内容や国の被害者対応、被害者の高齢化などを考慮すると、できるだけ速やかに適切な損害賠償が行われる仕組みが望まれる。国が必要な措置を講じ、全面解決が早期に実現することを期待する。

▽宇賀克也裁判官の意見

改正前の民法724条後段は除斥期間ではなく消滅時効を定めている。「除斥期間だと解さなければ賠償請求権が理論上永続することになる」という意見は現実性に乏しい。消滅時効だと解する場合には過去の最高裁判例を併せて変更することになるが、混乱を懸念するには及ばない。〔共同〕

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