福岡地裁=福岡市中央区で

 大手ハウスメーカー「住友林業」(本社・東京)の熊本支店の新入社員だった男性(当時24歳)が2016年1月に自殺したのは、長時間労働や上司のパワハラによるうつ病発症が原因だとして、男性の父親が労災と認めるよう国に求めた訴訟の判決で、福岡地裁は5日、労災不認定とした熊本労働基準監督署の処分を取り消した。中辻雄一朗裁判長は長時間労働とパワハラを認めた上で「前時代的な体育会系の指導で不適切だった」と非難した。

 判決によると、男性は15年4月に入社して熊本支店に配属後、16年1月1日に自殺した。両親は17年2月に熊本労基署に労災を申請したが、不認定とされたため、20年2月に提訴した。

 判決は、同社の1日の休憩時間は2時間と規定されているが、男性が取得できたのは1日1時間だったと指摘。自殺の半年前から1カ月の時間外労働が69~104時間に達していたと認定し、精神疾患に起因する過労自殺の基準に迫る状況だったとした。

 さらに上司が同僚の面前で男性を叱責したり、「気合が足りない」と発言したりしたことなどをパワハラと認定し「自死という最悪の結果につながりかねない不相当な指導と言わざるを得ない」と非難。長時間労働とパワハラにより、うつ病を発症し自殺したと判断し、労基署の処分を取り消した。

 男性の母親は判決後の記者会見で「長男の霊前にやっとあなたの苦しみがわかってもらえたよと報告できます。長男の死を無駄にしてほしくないと願うばかり」と涙ながらに訴えた。

 熊本労基署は「今後の対応は判決内容を検討し、関係機関とも協議した上で判断したい」などとコメントした。【志村一也】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。