愛媛県西条市の石鎚山麓に古くから伝わる「石鎚黒茶」の製法は、その希少性などから国の重要無形民俗文化財に指定されており、地元住民グループ「さつき会」が継承活動に取り組んでいる。2025年国際博覧会(大阪・関西万博)にも「絶滅危惧茶」として出展予定で、会長の戸田久美さんは「世界的にも珍しいお茶をぜひ味わってほしい」と話す。
その製法は茶葉を蒸して加熱した後、まず白カビで、次に乳酸菌でと、2段階に分けて発酵させ、天日干しで仕上げる工程だ。深い香りと上品な酸味が特長で、2段階発酵で作られる茶は国内では他に高知県の碁石茶しか現存せず、世界的にも極めて珍しいという。
市教育委員会によると、石鎚黒茶の起源は不明だが、江戸時代中期には生産が始められていた。ピーク時の1884年ごろには年間約20トンを出荷していたとされ、自家用を含めるとさらに多かったとみられる。その後は人口減少などが原因で衰退していった。
「石鎚黒茶が消滅の危機にある」。1996年、そんな報道に触れた会メンバーが継承活動を決意。当時、1人しかいなかった生産者の男性から製法を聞き取って試作を重ね、生産にこぎつけた。年間50キロ以下だった生産量は近年250〜300キロとなった。
会は現在、地元の高校などで石鎚黒茶をいれる体験授業をしたり生産技術を教えたりして、後継者育成を進める。他の希少な茶とともに万博にも出展する予定だ。戸田さんは「地元でも石鎚黒茶を知らない人は多い。関心を持ってもらうため、取り組みを続けていきたい」と話した。
〔共同〕
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