5月の相馬野馬追には388人が出場を申し込んだ。このうち女性は31人で、中学生以上は18人だった=福島県南相馬市小高区で2024年5月27日午後0時1分、尾崎修二撮影

 甲冑(かっちゅう)姿の騎馬武者が練り歩く福島県相馬地方の伝統行事「相馬野馬追(のまおい)」の執行委員会は、「未婚の20歳未満」という女性の出場条件のあり方について議論を本格化させる。女性の出場経験者にアンケートしたところ、回答者の8割が年齢制限を緩和した場合の出場に前向きだった。条件緩和は8年前も議題になったものの実現しなかった経緯があり、担い手の確保や男女平等の観点も踏まえて慎重に検討を進める。

 4月の執行委総会で、行事の功労者でつくる「相馬野馬追紫会」から年齢制限の緩和・撤廃を求める意見が出た。これを受けて執行委は6月、過去10年間で出場経験のある中学生以上の女性約90人を対象にアンケートし、約40人が回答した。

 担当者によると、年齢制限を緩和した場合、20歳を過ぎても「必ず出場する」が3割、「出場する可能性がある」が5割で、計8割が前向きだった。このうち半数が「年齢にかかわらず環境が許す限り出場したい」と答え、3割が「出場するなら20代まで」とした。今後は保存会や、騎馬会、神社の関係者と意見を交わす。

 南相馬市博物館によると、女性の出場が許可されたのは戦後初の開催となった1947年。6年後の53年、成人女性が出場したのが最初とみられる。その後の詳細は不明だが、84年には「未成年の未婚者」などの条件が「騎馬会決定事項」で明文化された。

 過去にも見直しは議題になった。2016年度の執行委の会合では、相馬中村神社が「条件を『未婚の女性』だけに改めるべきでは」と提言したが、「従来の決定事項を改める必要がないとの結論に至った」(五郷騎馬会長会)、「可能なかぎり伝統的な武家文化を踏襲していくべき」(保存会)との答申があり、実現しなかった。

 一方、南相馬市が22年に騎馬会員に実施したアンケートでは、回答者256人(男性9割、女性1割)のうち、女性の出場条件緩和賛成が70%に達し、反対17%、「どちらでもない」13%を大きく引き離した。賛成理由(複数回答)は、出場者数の減少対策の一つ▽野馬追の魅力向上▽社会課題として男女平等が求められている――の順に多かった。一方、反対者のうち13人が「勇壮なイメージが損なわれる」とした。

 例年出場している南相馬市在住の40代男性は「騎馬武者にとって大切なのは歴史や文化への理解度や馬術の技能のはず。女性の年齢制限も見直していい時期ではないか」と話す。

 執行委員長を務める南相馬市の門馬和夫市長は8日の定例記者会見で「国の重要無形民俗文化財の指定への影響など含め多方面から、関係者と協議していきたい」と述べた。【尾崎修二】

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