日本の美術館が、合わせて8500万円で購入した2つの絵画。
今、贋作(がんさく)の疑いが浮上しています。
FNNは、高知県立美術館に向かいました。
偽物と指摘があったのは、ドイツの画家ハインリヒ・カンペンドンクの作品とされている「少女と白鳥」。
画家の作品が記録されている目録を見せてもらうと、不審な点が見つかりました。
高知県立美術館・奥野克仁学芸課長:
他の作品は図版(絵)があるが、この作品は、作品名と制作年だけで、絵の所在ははっきりしていないと書いている。
1919年に制作された「少女と白鳥」。
しかし、所在は不明となっていて、どんな絵かも分かっていませんでした。
その謎の多い絵画を公費1800万円で購入したのが28年前。
イギリスの権威あるオークション会社で競売にかけられた資料もついていたといいます。
美術館では長年、本物としてこれまで何度も展示してきましたが、奥野学芸課長は「十中八九は、贋作ではないか。驚きしかなく当惑している。本当に県民の皆さんには、申し訳ないことをしたということになる」と話します。
贋作が疑われる絵画は、同じ四国の徳島県立近代美術館にもありました。
フランスの画家ジャン・メッツァンジェの作品「自転車乗り」とされる絵画を26年前に公費6720万円で購入していました。
鑑定書もついていたといいます。
この件について、徳島県立近代美術館・竹内利夫課長は「ショッキングなこと。(絵画)を見てくださったお客さまに対して、本当に心苦しい思い。もうなんて言っていいか…」と話しました。
この2つの贋作を描いたと疑われているのが、ドイツの天才贋作師・ウォルフガング・ベルトラッキ氏です。
2011年には、絵画を偽造した罪で有罪判決を受けている人物。
これまで86億円をだまし取ったとされています。
多額の税金が偽物の絵画に費やされてしまったことについて、街からは「誰でも知っているような人の作品であればすぐ偽物とわかるが、見たことがない絵なので仕方がない」といった声が聞かれました。
専門家も、この贋作のクオリティーを認めざるを得ないといいます。
帝京大学・岡部昌幸名誉教授:
見破れないかもしれない。絵画の技巧だけではなく、資料が非常に整備されていて、作品にストーリーがつけられている。信じるに足る。
美術館は引き続き、本物かどうかの調査を進めるとしています。
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