2024年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、文部科学省が29日、都道府県・政令市別の公立校の平均正答率や解答の分析結果を公表した。目的や話題に沿った内容を記述したり、データをもとに考えたことをまとめたりする力に課題がみられた。同省は調査結果をもとに授業の改善につなげるよう、教育現場に呼びかける。

国語 物語の感想書く力高く

小学生の国語の正答率は67.8%だった。学習指導要領上の分類のうち、「読むこと」(70.8%)に加え、例年苦戦する児童が多い「書くこと」も68.5%と高い水準となった。

物語を読み、本文中の言葉や文を取り上げながら心に残ったところとその理由をまとめる設問は、正答率が72.7%と高かった。登場人物の人物像や物語の全体像を具体的に想像したり、表現の効果を考えたりすることができた。

一方で目的や意図に応じて、自分の考えが伝わるように、表現方法を工夫して書く力には課題がみられた。

学校で1〜6年生が1つの班をつくって遊ぶ「たてわり遊び」について、児童の取材のメモを使いながらその良さについて考えたことをまとめる問いでは、無解答率は4.9%と低かったものの、正答率が56.7%にとどまった。メモの内容と自らの意見を区別せずに解答してしまう誤答がみられた。

中学生の国語の正答率は58.4%だった。小学生と同様に「書くこと」の正答率が65.7%と比較的高かった一方、「読むこと」は48.3%だった。話し合いでの発言や文章から必要な情報を取り出したり、目的に応じて工夫して記述したりできるかを問う問題が複数出された。

植物の葉の形について書かれた文章を読み、内容を要約する問題の正答率は43.3%にとどまった。盛り込むべき情報が漏れていたり、正確にまとめることができなかったりする誤答がみられた。

生徒へのアンケート調査とあわせて分析すると、「国語の授業で、目的に応じて必要な情報に着目して要約し、内容を解釈している」と答えた生徒の正答率が高く、無解答の割合も低かった。

この文章に添えられた様々な形の葉の図について、「葉の形をたくさん思い浮かべるため」といった本文中での役割を選択肢で選ぶ問題では、正答率が36.7%だった。文科省は「文章と図を結びつけ、関係を踏まえて内容を解釈することに課題がある」とした。

算数・数学 複数データの分析力に弱み

小学生の算数の正答率は63.6%だった。「数と計算」「図形」の問題は正答率が66%に上ったが、速度などを取り上げた「変化と関係」は52.0%にとどまった。「データの活用」は62.0%だった。

直径22センチの球がぴったり入る立方体の体積を求める式を書く問いでは、「22×22×22」と正しく答えた児童は36.9%だった。球の直径と立方体の辺の長さの関係を捉えきれず、円周率を使って体積を求めようとした誤答が15.9%に上った。

桜の開花時期が3月だった回数と4月だった回数を年代ごとに表した折れ線グラフを読み取り、回数の違いが最も大きい年代と、何回の差があるか記述する問題の正答率は44.2%。年代は正しく解答しているが、差を読み取って記述することができず誤答となったケースがあった。

中学生の数学の正答率は53.0%だった。1次関数の基礎的な知識は身についているとしたが、「図形」の問題が弱く、正答率は40.9%だった。

2つの線分の長さが等しいことを説明するため、同一の線上にある2つの三角形が合同であることを証明する問いは正答率が26.5%にとどまった。無解答の生徒も33.2%と目立った。

「データの活用」の領域では、車型ロボットの進んだ距離について箱ひげ図の問題が出題された。5つの箱ひげ図を比較し、データの分布状況から読み取れる傾向について記述式で説明する設問は、正答率が26.4%と低かった。

箱ひげ図の問題は23年度にも出題されたが、正答率は33.9%で、「四分位数や四分位範囲といった箱ひげ図の基本的な特徴についての理解が不十分なまま解答している生徒が多々みられる」(文科省)と、課題が残る。

同省は小学校段階からデータを言葉と数を使って表現する力を身につけたいとした上で、「ICT(情報通信技術)などを利用してデータを整理し、代表値を求めたり、グラフで表したりして、その結果をもとにデータの分布の特徴や傾向を読み取って判断し、表現する活動を授業に取り入れることが効果的だ」とした。

家庭学習の時間は減少

学力テストとあわせて実施したアンケート調査では、児童生徒の生活習慣などを調べた。24年度は初めて全員が1人1台配備された学習用端末で回答した。

平日に学校の授業以外で勉強する時間について、1日で「30分以上」と答えたのは小学6年で81.8%、中学3年で82.8%だった。

21年度と比べると、それぞれ5.3ポイント、7.1ポイント下がった。休日に1時間以上勉強している小6は49.0%、中3は63.4%で、いずれも低下した。

文科省はICT機器の導入によって、短時間で質の高い学習ができるようになった可能性もあるとして、今後分析する必要があるとしている。

テレビゲームを平日の1日あたり「1時間以上」すると答えた小6は73.8%、中3は70.0%で、横ばいだった。

SNSや動画視聴を「1時間以上」すると答えた小6は50.7%、中3は78.9%だった。

テレビゲームは小中ともに約3割が「3時間以上」と答え、SNSや動画視聴は小6の約2割、中3の約3割が「3時間以上」と回答した。こうした児童生徒は「3時間未満」のグループより勉強する時間が短かった。

(斎藤さやか、森紗良)

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