1月、東京・千代田区の元区議や元部長が逮捕された官製談合事件をうけ、千代田区の再発防止検討委員会がアンケート調査を実施し、その報告書をFNNが入手した。

そこには、部長級職員の13.6%が、「議員から入札前の情報を要求された」という実態、さらには区議会議員が職員に対し「お前の人事異動がどうなっても知らないからな」などとパワーハラスメントともとれる発言があったことも判明した。

1月24日、千代田区の嶋崎秀彦元区議(64)や元部長が、区立学校の工事をめぐり、業者に入札情報を漏らした官製談合防止法の疑いで逮捕された。その後、起訴された2人は、東京地裁に執行猶予付きの有罪判決を受けている。

千代田区は事件を受けて、原因の究明と再発防止に向けた検討委員会を発足。管理職や係長級の職員323人を対象に、過去5年以内の「議員との関わり方」についてアンケート調査を行った。FNNが入手した報告書からは区議会議員が区の幹部職員に対し、不当に情報を要求する実態があったことが明らかになった。

■アンケートで判明 幹部の13.6%が「議員から“違法”な要求あった」

主な結果は以下の通り。(設問はすべて過去5年以内)

▼議員・元議員から、入札前に「業者名」「予定価格」「最低制限価格」などの契約に関する情報の提供を求められたことはあるか
【「はい」と答えた職員の割合】
全体・・・・・・1%
部長級職員・・・13.6% (22人中3人)

▼議員・元議員から、契約関連以外の秘密情報の提供を求められたことがあるか
【「はい」と答えた職員の割合】
全体・・・・・・2.9%
部長級職員・・・27.3% (22人中6人)

▼議員・元議員から法令への抵触が懸念される要求を受けたことがあるか
【「はい」と答えた職員の割合】
全体・・・・・・2.9%
部長級職員・・・13.6% (22人中3人)

▼議員や元議員から業者の紹介を受けたことがあるか
【「はい」と答えた職員の割合】
全体・・・・・・14.6%
部長級職員・・・72.7% (22人中16人)

対象職員323人における割合は少ないが、議員や元議員が情報を要求したり「無理なお願い」を頼むのは、部長など役職の高い職員になりがちだという実態が読み取れる。実際に、今回の汚職事件でも嶋崎区議が入札情報の漏洩を要求したのは元「部長」だった。

■議員が職員に“圧力”か-「お前の人事異動がどうなっても」

「議員の不当な要求」をめぐっては、さらに、生々しい実態が判明している。議員や元議員から、いやがらせやハラスメントを「受けたと感じた」「他の職員が受けていると感じた」と回答した部長級職員22人のうち、10人(45.5%)にのぼった。

議員・元議員からの圧力について、自由記述を求める欄には、(いずれも役職不明)
「言うことを聞かなければ、どうなるかわからないなどと仕返しをほのめかす圧力があった」
「制度的にできないことに『できる理由を考えるのが仕事だろう』と言われた」
「対応できない依頼を断ったところ、『お前の人事異動がどうなっても知らないからな』と言われた」

実際、今回の事件と照らし合わせても、元部長が嶋崎元区議に「自分を教育長に推してもらいたい」というメールを送っていた新事実も報告書で明らかにされている。目を疑いたくなるような“ハラスメント”発言は、実際に議員が幹部職員の人事に多大な影響力があるための、「悪循環」によるものと推察される。職員は希望の役職に就くために議員に協力するという認識のもとに「政と官」の癒着構造が成り立ち、今回の事件につながったともいえる。

再発防止検討委員会はこの結果を踏まえ、こう振り返る。「議員への過度な意識により、適切な判断を誤らせ、非違行為につながった可能性が高い」「職員と議員の間に不適切な関係性が生まれ組織風土と化していた」として「議員との関わり方」が課題とした。

千代田区は職員の議員対応における具体的な行動基準や契約制度の見直しなどの再発防止策をまとめ、癒着構造を是正していく方針だ。

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