[沖縄県歯科医師会コラム・歯の長寿学](351)

 外科医というと「手術」を思い浮かべる人は多いでしょうか。次の文を読んで想像してみてください。「この前、腕をけがしたところが化膿(かのう)して腐っちゃって。病院に行ったら麻酔して腐ったところを削り取られて、薬塗ってもらって包帯でぐるぐる巻きだよ」

 どうでしょうか。身の回りでこういう話を聞くことはあまりないのではないでしょうか。それは傷ができたところは細菌感染しても血液に含まれる免疫細胞が体を守るため、この話のように重症化する前に治ってしまうことがほとんどだからです。ちなみにこの処置はデブリードマンという外科処置で、感染を広げないために行います。

 小学校の保健の時間に、虫歯はミュータンス菌が歯を溶かしている、と習ったことを覚えている方もいるでしょう。菌が原因ということは歯が細菌感染しているわけです。ところが歯に対して免疫細胞が届くのは、血管がある歯茎か歯の中心の歯髄といういわゆる「歯の神経」だけです。そのため、歯の表面についた細菌を除去するために必ず歯磨きをしなくてはなりません。

 さて、先ほどの話を歯に置き換えてみましょう。「歯が痛くて歯医者に行ったら虫歯と言われて、麻酔をして虫歯を削って埋めてもらったよ」

 こう聞くと、身近になった気がしませんか。歯科医院で行われる治療のほとんどはデブリードマンと一緒です。外科処置とは体に傷をつけて病巣を取り除く処置ですが、歯科治療を外科処置と考えている人はほとんどいないのではないでしょうか。

 デブリードマンを「感染しているところを取り除くこと」として捉えると、実は歯磨きも歯垢(しこう)という細菌の塊を取り除くデブリードマンなのです。ところが歯磨きもちゃんとやろうと思うとテクニックが必要です。一度歯科医院でちゃんとしたテクニックを習ってください。そして皆さん自身が外科医であると思って、毎日しっかり「手術」してくださいね。(又吉亮、南部徳洲会病院=八重瀬町)

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