百条委員会を終えた兵庫県の斎藤元彦知事(30日、県庁)

兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などの解明の場で、トップに進言しづらいなどガバナンス上の問題点が露呈しつつある。30日に開催された県議会の調査特別委員会(百条委員会)。職員らが「理不尽な叱責を受けた」と知事の言動に萎縮したとする一方、斎藤氏は業務上必要な指導だったと反論した。意思疎通の不足が浮き彫りとなった。

「必要な範囲とは思わない。知事から謝罪やねぎらいの言葉はなく、理不尽な叱責を受けたと感じた」。この日、公開の証人尋問に臨んだ東播磨県民局長は「視察先の入り口まで20メートル歩かされたとして斎藤氏が叱責した」とする告発文書の内容を認め、当時受けた印象を振り返った。

同じく証言した県まちづくり技術センター理事長によると、斎藤氏は自身が把握していない2025年国際博覧会(大阪・関西万博)関係の情報が報じられた際、机をたたきながら「こんな話、聞いていない」と発言。知事就任前に計画が決まっていたというが「県庁内で意思決定していないことを(報道で)先に出すことは許せない」と怒鳴ったという。

百条委が実施した職員アンケートの中間報告では、伝聞を含め4割弱にあたる1750人が斎藤氏のパワハラを見聞きしたとし、59人は直接目撃したと回答した。これまで百条委に出席した職員は、同氏の叱責を受け「忖度(そんたく)した」と証言。組織内のコミュニケーション不足を示すやりとりも目立つ。

問題を巡っては、前総務部長の井ノ本知明氏や前副知事の片山安孝氏ら側近4人が告発文書を作成した前西播磨県民局長の私的情報を漏洩した疑いが浮上。公益通報の調査結果を待たず、前県民局長を懲戒処分とすることに異論が出た際、処分案を審議する綱紀委員会の委員長を務めた井ノ本氏が「問題ない」と説明した経緯も判明した。

片山氏が知事のパワハラを受けたとする職員に「あまりしゃべり過ぎるな」とクギを刺していたとする百条委での証言もある。県幹部らの振る舞いが、県庁組織のガバナンスを機能不全に陥らせていた疑念も生じている。

斎藤氏は「厳しい叱責をすることはあるが、業務上必要な範囲内」とパワハラを否定してきた。この日の証人尋問では「仕事は厳しく、がスタイル」と説明。視察先で大声を出したと認める一方、職員の対応に問題があったとする見解を示した。

他方、深夜や休日にチャットで指示をした経緯については「適切でなかった面もあるかもしれない。反省している」と述べた。

疑惑が次々と浮上する現状に「想定以上に知事がぽろっと言ったことがどんどん伝わっている」としたうえで「自分なりに一生懸命仕事をしてきた。結果的に不快な思いをさせたのは力不足で残念だ」とした。

職場でのパワハラについて、厚生労働省は①優越的な関係を背景とした言動②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動③労働者の就業環境が害される――の3要素をすべて満たすものと規定している。

百条委は今後、弁護士の意見を聞きながら、発覚した言動や行動の目的や手段が正当だったかを検証し、パワハラに該当するか判断する。

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