台風10号の影響で、宮崎県内の5つの市と町では竜巻とみられる突風が発生した。Mr.サンデーは専門家とともに現地を取材、“同時多発”という突風の謎を追った。
台風接近中の宮崎県で起きた“竜巻”
1日、Mr.サンデーのカメラが捉えたのは、台風10号が残した竜巻とみられる突風の爪痕。
この記事の画像(17枚)ソーラーパネルが無残にも吹き飛ばされ、宮崎市の住宅街では、家屋の屋根が軒並み削り取られたように崩れ落ちていた。
台風10号が接近する中、宮崎市を襲った竜巻とみられる突風。
“竜巻”を目撃した人:
恐怖ですね。前にも車があって後ろにも車があって。「こちらに来ないでくれ」って思いながら。
屋根が飛ばされた人も……。
被害に遭った男性:
ガタガタガタッて鳴って、何か物が刺さるような感じがあって。本当にこのままじゃ死ぬと思った。
Mr.サンデーが独自に入手した宮崎市内の“竜巻映像”。すさまじい勢いで物が飛ばされ、ソーラーパネルも軽々と宙を舞った。この時、時刻は午後2時前だったが、これで終わりではなかった。夜中には別の場所でも……。
午後11時過ぎに大淀川沿いで撮影された映像を見ると、突如、巨大な光が瞬き、竜巻とみられる渦が進む様子が確認できた。
台風10号の影響で、宮崎市では30人がけがをした。住宅への被害は863棟に上り、その大半が“竜巻”によるものとみられる。
海上で発生し内陸へ移動
なぜ、台風の接近と共に“竜巻”が相次いで発生し、被害が拡大したのか?竜巻などの災害に詳しい宮崎大学の竹下伸一准教授と被害現場を訪れ、その脅威を取材した。
竹下准教授がまず注目したのは、ある一軒家。周囲と比べ、屋根や壁が損壊し、特に大きな被害が出ていた。その理由を竹下氏はこう推察する。
宮崎大学 竹下伸一准教授:
なんでこのお宅かなと思ったらここに薬局がある。1回ちょっと風が遮られるような状態になってしまったんじゃないかなと思うんですよね。行き場をなくした風がそこで渦巻いてしまうってことはよくあると思うんですけども。
この家の前には、まるで壁のようにドラッグストアの建物がある。ここで“竜巻”が一瞬足止めされることで、被害が増した可能性があるという。
さらに、建物の被害状況を見るとある特徴がみられた。同じ建物でも、被害が大きな壁と、そうでない壁があることがわかる。実は……。
竹下准教授:
海を向いてる方の壁はもうほとんどやられてしまって、海側のガラスは割れてますけど、こっち側は比較的被害は少ないですね。
被害が大きいのは、いずれも東にある、海側の壁。標識も海側から陸側へ倒されていた。つまり“竜巻”は、海上で発生し、陸に来た可能性が高いという。
宮崎市の被害エリアの1つ、佐土原町で、その軌跡を追うと……。
海沿いに住む男性:
見ての通り、屋根も全部剥がれて。雨戸とかもちょっとへこんでるんですけど。(“竜巻”が海から)そこを抜けていったような感じです。
確かに、海に近い場所では、28日午後1時53分ごろ、無数の黒い影が大きく旋回しながら宙を舞った。このわずか1分後には、約1.3km北西にある住宅街の幼稚園でも“竜巻”がカメラに捉えられていた。
外の様子を確認する園長が突然、建物の方へ走り出し、その10秒後に轟音とともに、辺りの様子は一変した。職員たちも慌てて避難。竜巻がドアを打ち付けているのか、不気味な音が鳴り響いた。
園長:
台風は来ると思ってましたけど竜巻が来るとは全く思ってなかったので。すぐ戻って避難をさせたところです。
その後、“竜巻”は住宅街を抜け緑豊かな丘を越えても勢力が衰える様子はなく、内陸へまっすぐ突き進んだ。
駐車場に停めた車の前方に設置されたドライブレコーダー映像では、洗濯物が揺れ始めた直後に駐車場の外が真っ白になり、わずかな建物の隙間から次々と物が飛び込んできた。ちょうど“竜巻”の中に入ったのか。この時、車の後方の映像を見ると、周辺の物が円を描くように吹き飛ばされていた。
車の中にいた人:
ただただもう本当恐怖を感じて、ブレーキを踏むことしかできなかったですね。ほんと(“竜巻”の)真ん中にいたって考えると怖いですね。
通常、竜巻は山や高い建物に当たると勢力が衰えるというが、このエリアには遮るものが少なく、速いスピードのまま内陸へ。
午後1時50分ごろに発生した“竜巻”は確認できただけでも、わずか5分ほどの間に、約7kmも陸地を進んでいた。
台風は竜巻ができる条件が揃いやすい
さらにその9時間後にも、宮崎市の大淀川沿いで竜巻とみられる突風が発生した。被害を受けた場所を調査した宮崎大学の竹下准教授は、思わぬ可能性を指摘した。
竹下准教授:
被害があった所を追っていくと竜巻とみられる突風はちょっと北寄りを進んで、それが起こったまたちょっと後に、別のものがもう一つ発生して、今度は少し南寄りを進んでいったんじゃないかなと思うんですよね。
――“竜巻”は一つではないということでしょうか?
竹下准教授:
そうですね。同時多発的“竜巻”というふうに考えています。
竹下准教授によれば、大淀川沿いの被害地点を結ぶと一直線にはならず、2本のラインが浮かび上がる。竜巻は通常まっすぐ進むため、2つの竜巻が発生し、それぞれが爪痕を残していったと考えられるというのだ。
実は今回、宮崎市の2カ所だけでなく、少なくとも県内5つの市町で竜巻とみられる突風の被害が確認されている。一体なぜ、台風10号の接近によって“竜巻”が同時多発的に発生したのか?
気象学の権威、東京大学名誉教授の新野宏氏は……。
東京大学 新野宏名誉教授:
日本で起きる竜巻のだいたい20%ぐらいは台風に伴って起きます。(竜巻は)回転する積乱雲に伴って起きるんですね。
そもそも竜巻は「回転する積乱雲」から生まれる。そのため、積乱雲が集まっている台風は、竜巻ができる条件が揃いやすいという。
とりわけ今回、台風10号が宮崎県に接近した際の雨雲レーダーを見ると、台風の目の北東側、まさに宮崎市の辺りで「レインバンド」と呼ばれる帯状に発達した積乱雲が存在していた。
東京大学 新野宏名誉教授:
台風の中心の少し外側のところにはレインバンドが何本か起きることがありまして、1つのレインバンドの中に複数個の回転する積乱雲があって、違う場所でほぼ同じ時刻に竜巻が起きるということも十分あり得ると思います。
同時多発的に宮崎県内を襲ったとされる“竜巻”。何かしらの予兆はなかったのか?
被害に遭った人:
ドカーンっていう音がしたんです。窓ガラスも割れて網戸も中に入ってて。
――本当に急だった?
被害に遭った人:
そうです、そうです。
“竜巻”を目撃した人:
相当なんかこうゴーッと地鳴りがしてですね。3軒隣の方が被災したと。
何の予兆もなく、突然やってきたという“竜巻”。実際、気象庁の「竜巻注意情報」が出たのは、“竜巻”が発生してから約50分後のことだった。
東京大学 新野宏名誉教授:
台風の中心の北東側は、竜巻を起こす回転する積乱雲が起きやすい状況にあります。特にレインバンドが北東側にやってきた時は、竜巻に対して気をつけていただくということは必要だと思います。
(「Mr.サンデー」9月1日放送より)
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