大阪地裁=大阪市北区で、曽根田和久撮影

 小林製薬の紅こうじサプリメントを摂取し、腎障害などを発症したとして、大阪府の40代男性が治療費や慰謝料など約500万円の損害賠償を会社に求める訴えを大阪地裁に起こした。小林製薬が腎疾患の症例を把握しても販売を続けたことを踏まえ、男性側は「事態が早く明らかにされれば購入、摂取はしなかった」と訴えている。

小林製薬の紅こうじサプリメントを巡る主な経緯

 小林製薬によると、紅こうじサプリの健康被害を巡り、訴訟になるのは全国初。サプリ原料の一部から検出された青カビ由来の天然化合物「プベルル酸」が腎障害を引き起こすとされているが、健康被害との関連は調査が進められている。

 提訴は7月12日付。訴状などによると、男性は1月23日に「紅麹(こうじ)コレステヘルプ」を購入し、摂取を始めた。3月下旬に健康被害が表面化したことを受け、5月1日に受診した病院で急性腎障害などと診断された。

 腎機能は改善しつつあるが、発症はサプリが原因だと主張。会社側の対応が遅れた点も批判している。製造物の欠陥による健康被害などが生じた場合、メーカー側の賠償責任を定める製造物責任法(PL法)に基づき提訴した。

 これに対し、小林製薬は地裁に提出した答弁書で請求棄却を求めている。答弁書で会社側は医療費や交通費として男性に計約4万円を支払ったと説明。「因果関係があると判断できれば、男性に誠実かつ適切な補償を行う予定だ」と述べている。

 男性の代理人弁護士は「腎障害の原因はサプリ以外になく、男性は会社の公表が遅れたことに憤っている」と話した。小林製薬は「個別のお客様とのやりとりに関する回答は差し控える」とコメントした。

 小林製薬は1月15日~2月1日に腎疾患の症例6件を把握していたが、問題を公表したのは2カ月ほど経過した3月22日だった。外部の弁護士による調査報告書では「消費者の安全を最優先に考えることができていなかった」と指摘した。

 一連の問題を受け、小林製薬は8月、紅こうじ事業からの撤退を発表。後遺障害などに対する補償を始めることも明らかにし、対象者の受け付けを始めている。厚生労働省によると、遺族らから相談を受け、詳細な調査に乗り出した死亡事例は9月2日時点で計119件に上っている。【木島諒子】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。