静岡県警本部=高場悠撮影

 北朝鮮による外貨獲得工作を巡っては、国外で活動する北朝鮮のIT労働者の関与が国連などから指摘されている。日本では警察庁などが3月、日本人になりすますなどしてソフトウエア開発などを受注し、報酬を北朝鮮に送金している可能性があるとして注意喚起した。そうした指摘を裏付けるような北朝鮮への資金還流の実態が静岡県警の捜査で判明した。

 捜査関係者によると、外国為替証拠金取引(FX)口座を不正に開設した日本人男性(51)らを私電磁的記録不正作出容疑で書類送検した事件の捜査で、ソフト開発を利用した資金還流が浮上した。日本人男性ら複数の「協力者」が加担したとみられる。

 北朝鮮のIT労働者が国外のIT企業の従業員の立場を利用して、ソフト開発業務を協力者に発注。協力者は開発作業を北朝鮮の関連組織に依頼し、完成品をIT企業に納入していた。IT企業からの報酬は協力者に支払われ、手数料を除く大半が中国などの銀行口座に送金される構図で、送金方法は北朝鮮の人物が指示していたという。県警は中国などを経由して北朝鮮に還流したとみている。

ソフトウエア開発を利用した北朝鮮への資金還流図

 県警の調べでは、協力者の銀行口座には2022年1~10月、IT企業から計約5600万円が振り込まれ、うち約4200万円が中国などに送金されたことが明らかになった。

 警察庁によると、国連加盟国の報告では、北朝鮮のIT労働者が北朝鮮に約1000人、中国など国外に約3000人いると推定。年間2・5億~6億ドルが北朝鮮に送金され、核やミサイルの開発などに充てられているとされる。【最上和喜、丘絢太】

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