「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家を殺害した罪に問われている元妻の裁判員裁判がいよいよ12日、始まる。

■【動画で見る】「紀州のドン・ファン」殺害事件 元妻は「無罪」主張へ 最大の争点は『犯人性』

関係者によると、元妻は、無罪を主張するとみられることがわかった。

10日、和歌山県田辺市。

樋口諒記者リポート:ここですね。野崎さんが暮らしていた家です。最近は手入れがされていないのか、木が塀を乗り越えて道の方に出てきてしまっています。

「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家・野崎幸助さんが暮らしていた家は、主を失ってから6年が経ち、少し荒れた様子だった。

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■「1億円ぐらいは紙切れ」一代で億単位の財を築いた野崎さん

12日行われる初公判を前に、野崎さんと45年来の友人だった男性が、心境を語った。

野崎さんと45年来の友人・沖見泰一さん:社長がぽっくり死んだのか、やっぱり”早貴がやった”のかとかっていうことなるかもわからんし。そうじゃなくて、こんなことだったのかっていうようなことがあるとすれば、それを知りたい。

野崎幸助さん:1億円ぐらいは紙切れ。私にとっては。

和歌山県田辺市で生まれた野崎さん。地元の中学校を卒業後、金融業や酒類の販売、不動産事業などで成功し、一代で億単位の財を築いた。

自宅には、様々な高級品があり、強盗に4000万円相当を奪われた経験も。

野崎幸助さん:(強盗が)『カネや、カネや』と言って。ドスを突き付けて。

(Q怖くなかった?)

野崎幸助さん:怖くありません。(狙われるのは)男の勲章なんですよね。

また、2016年には、50歳下の交際相手に、現金600万円と時価5400万円相当の貴金属を盗まれた。

■野崎さんは「紀州のドン・ファン」と自ら称していた

野崎幸助さん:(女性が)時計とかダイヤモンドとか、一緒に入っているやつ全部持って行った。(女性とは)アバンチュールですね。それが私の脇の甘いところ。

 野崎さんは、多くの女性と交際してきたことを赤裸々に語り、スペインの伝説上のプレイボーイになぞらえて、「紀州のドン・ファン」と自ら称していた。

2018年、76歳の時に、55歳年下の女性と結婚。

のちに野崎さんを殺害した容疑などで逮捕されることになる、須藤早貴被告。

野崎さんの45年来の友人・沖見泰一さん:普通の若い女の子で。手からスマホを離さないというイメージ。大人の話で田舎の話とか、色々とそういう。もろもろの話しても、全然ちんぷんかんぷんで。ただ、そこにいるっていうだけの存在だった。

■事件の当時の状況をハウスキーパーの女性が語る

須藤被告が、逮捕に至るまで一体何があったのか…

結婚からおよそ3カ月後、野崎さんは、自宅で死亡した状態で見つかる。

その時の様子を、長年働いていたハウスキーパーの女性が、詳しく証言していた。

死亡した日の正午ごろ、ハウスキーパーの女性は、野崎さんと須藤被告が1階で昼食をとる姿をみていた。

野崎さんのハウスキーパー:午後3時半か、4時になったら、二人がラブラブするだろうから、いたら邪魔だろうなって勝手に思って。

その後、ハウスキーパーの女性は外出。

午後7時ごろに帰宅すると須藤被告が1人でいて、『野崎さんは「寝る」と言って午後5時ごろに2階に上がった』と説明した。

その後、ハウスキーパーの女性と須藤被告がテレビを見ていると、ある異変が…

ハウスキーパーの女性:ドンドンって聞こえたんですよ、音がドンドンって、ちょうど真上が社長の部屋だから…合図だから上に戻ったらって。

 午後10時半ごろ、須藤被告が2階に上がり、亡くなっている野崎さんを発見した。

警察のその後の調べで、野崎さんの死亡推定時刻は午後9時ごろと判明。

胃の中から覚醒剤が検出され、死因が「急性覚醒剤中毒」であることもわかった。

■捜査は難航を極め、事件から3年後に逮捕された

他殺なのか、自分で覚醒剤を服用したことによる事故死なのか。

疑惑の目は、事件当時、家にいた須藤被告に向けられ、そのころ、FNNの単独取材に応じていた。

須藤早貴被告:本当に殺してないです。社長の前の女の人が覚醒剤をやっていたと、家政婦の方から聞いています。

藤代耕平記者:捜査員らによって野崎さんの家の庭にブルーシートが張られました。スコップで地面を掘るような音が聞こえます。

警察は、野崎さんが死亡する12日前に愛犬の「イブ」が突然死したことにも着目。

覚醒剤による死が疑われ、埋葬された「イブ」を掘り起こして鑑定したり、野崎さんが飲んだビールの空き瓶およそ2000本も押収したりしたが、いずれも覚醒剤は検出されず、捜査は難航を極めた。

そして、事件から3年後の2021年…

警察は、野崎さんに致死量の覚醒剤を口から摂取させて殺害したとして、須藤被告を逮捕した。

野崎さんが覚醒剤を口から摂取したとみられる夕方の時間に家に須藤被告しかいなかったこと。

須藤被告が、事件の前にインターネットで覚醒剤について調べていて、密売人とSNSを通じて接触したとみられ、警察は、状況証拠が揃ったとして逮捕に踏み切った。

■野崎さんは、須藤被告との離婚をほのめかしていたという

また、その後の取材で、事件前、野崎さんは、須藤被告との離婚をほのめかしていたことがわかった。

野崎さんの知人 武田美喜枝さん:財産誰にやるんや?と聞いたら、『イブに全部やる』イブて犬の名前や。『犬にやる前に嫁さんちゃうんか?』て言うてん。『まぁな、まぁな』と。その時から心は冷えていたんかな。

沖見泰一さん:結婚したけども田辺には皆目来ないんだとか言って、もうそうこうしてるうちにね結婚したのに、もう次の彼女ができて、もうあの子と別れるとか言ったりね、その須藤早貴と。

須藤被告と別れた後の交際相手をすでに決めていたという野崎さん。

警察は、「離婚問題」をきっかけに、須藤被告が犯行に及んだ疑いもあるとみて、捜査を進めたが、須藤被告は逮捕後の調べで容疑を否認した後、事件への関与について供述しなくなった。

いよいよ始まる裁判。

関係者によると、須藤被告は、無罪を主張するとみられることがわかった。

注目の初公判は、12日午前10時40分に開廷する。

■最大の争点は『犯人性』 疑わしきは罰せずが裁判のルール…

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:須藤被告が無罪を主張するということで、最大の争点は「犯人性」です。 通常、刑事事件では、「検察側の証拠が合理的な疑問を残さないかどうか」という所を判断します。 今回は、「状況証拠のみ」で、「直接証拠」は少ないです。 ですから、検察側は「間接証拠」を積み重ねて、「被告以外に犯人がいないんだ」と。つまり、「“犯人性”があるんだ」と言うことを立証していくと思います。 それに対して、弁護側は「そういった証拠は値しない」として、無罪を主張することになると思います。 大前提として、「疑わしきは罰せず。被告人の利益に」というのが、刑事裁判のルールです。 なので、そういった証拠が認められなければ、有罪にならないというところも、裁判員の方々は厳しくみていかないといけないということになります。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年9月11日放送)

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