傘寿を超えても働ける――。シニア世代の仕事観について、民間企業がアンケート調査したところ、回答した高齢者の約7割が「80歳以上でも働くことができる」と回答した。回答者はマンション管理の代行業務に従事する65~91歳の男女540人。そんな元気なシニアたちはやってみたい仕事や、仕事で得た収入の使い道についてどう答えたのか。
代行業界大手の「うぇるねす」(東京)が16日の「敬老の日」を前にした8月末に実施した。同社には約3240人(平均年齢70歳)が登録し、管理人が不在のマンションに代行で派遣されている。回答者は男性481人、女性59人。70代が最も多く約7割を占め、80歳以上も51人いる。
調査結果によると、定年後に働き始めた理由は①健康のため②生活・医療費のため③自由な時間があったため――の順に多い。他にも「社会参加のため」「ずっと家にいたくなかった」などがあった。
働けると思う年齢については実際に働き始めてからの意識の変化が大きいようだ。
「(定年後に働き始める前は)何歳まで働けると思っていたか」との問いへの回答は、70~79歳(228人)▽80~89歳(240人)▽90歳以上(28人)――だった。
だが、「(現在は)何歳まで働けると思うか」への回答は、70~79歳(115人)▽80~89歳(315人)▽90歳以上(59人)――で、約7割が「80歳以上」となった。
自由記述欄には、働くことが生きがいにつながっているとのコメントが寄せられた。「自身の子育ての反省も込めて、今の親世代のサポートをしたい」「仕事を通して、楽しく会話をしたい」といった内容だ。
チャレンジできるのであればやってみたい仕事について尋ねたところ、ほぼ半数が「今の仕事で満足・特にない」と答えた。一方で、「営業・事務・経営など会社での仕事」(43人)、「介護・福祉」(29人)と回答した人もいた。会社員としての経験を生かしたり人を喜ばせて助けになったりしたいという思いの表れだという。
また、配偶者がいる人を対象にした「働き始めてから家族関係はどのように変わったか」との質問には、回答者のうち「家族関係が良くなった」と答えた人が男性で26%、女性で30%いた。「悪くなった」という回答はほとんどなく、自宅にこもらずに適度な距離が生まれたことが良好な関係の要因になったとみられる。
収入の使い道については、「趣味・娯楽費」が半数を超え、次いで「生活費」「貯金」が多かった。希望収入額は「10万円」が最も多かった。
同社の担当者は調査結果を踏まえ、「就労による『社会参加』が孤独を防ぎ、心と体に健康をもたらしていると思う」と話す。
2023年の「敬老の日」にちなみ総務省が発表した人口統計によると、65歳以上の高齢者は総人口の約3割の3623万人。22年に仕事に就いていた高齢者は912万人で、19年連続で増え、過去最多だった。
就業者全体に占める高齢者の割合は13・6%で、就業者のおよそ7人に1人が高齢者という状況にある。就業先は卸売業・小売業▽サービス業▽医療・福祉▽農業・林業――の順に多かった。【高橋昌紀、山田奈緒】
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