無罪判決が確定した男性のDNA型や指紋、顔写真を警察庁のデータベースから抹消するべきだとした名古屋高裁判決について、警察庁の露木康浩長官は12日の定例記者会見で「総合的に考慮をした結果、抹消するという結論について争う理由がないと判断した」と述べ、上告しない方針を明らかにした。
DNA型の保管は、国家公安委員会規則などに基づいて運用されているが、名古屋高裁は判決で、「憲法の趣旨に沿った立法による整備が強く望まれる」と指摘していた。
この点について露木長官は「現在の制度運用を前提とする判断を示した裁判例も他に相当数あり、裁判所の考え方も分かれている」とし、「今回の判決をもって直ちに立法などの措置が必要になるとまでは考えていない」と述べ、法整備については否定的な見解を示した。
名古屋高裁は8月30日、無罪が確定した名古屋市の男性について、DNA型などのデータ抹消を国に命じた1審・名古屋地裁判決を支持する判決を言い渡した。13日が上告期限だった。
警察庁によると、DNA型や指紋、顔写真などのデータ抹消に関連する訴訟は、今回の訴訟を含めて19件あり、うち15件で判決が確定し、いずれも国側が勝訴している。
警察庁のまとめでは、2023年末時点で容疑者のDNA型を約175万件、指紋を約1166万件、顔写真を約1259万件、データベースに登録している。容疑者のDNA型記録は国家公安委員会規則で、容疑者が死亡した場合と、「保管する必要がなくなった時」に抹消しなければならないと定めている。【山崎征克】
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