能登半島地震で被災し、一時は孤立状態に陥った石川県輪島市町野町地区の田んぼで15日、稲刈りがあった。育った米が出資者に届くオーナー制度を運営し、地区の農家を支援する島嘉文さんは「どんなに地形が変動しても、こうして米が完成した。能登の農家はあきらめていない」と感慨深げだ。
田んぼには出資した企業や個人と同じ数の「がんばろう能登」と書かれた看板が23枚立ち、雨の中、鎌で稲が刈り取られた。田んぼを管理する農業法人「粟蔵水稲」の社長、宇羅恒雄さんは「全国から支援の手が差し伸べられうれしい。復興にはまだまだ時間がかかり、耕作放棄地の増加も懸念しているが、地域の農業をこれからも守りたい」と力を込めた。
島さんによると、宇羅さんと連絡がついたのは1月1日の地震から6日後。家屋や納屋が壊れたとメールで伝えられた。他の農家からは土砂崩れで地区外に出られないとも言われた。2月、現地に出向くと、多くの田んぼで地割れが起き、沢からの水が止まっていた。一部はかろうじて作付けできそうだったが、米が順調に育つかどうか見通せなかった。
「例年同様、出資を募ってよいものか」。迷った島さんの背中を押したのは、2016年に立ち上げたオーナー制度に参加していたリピーターだった。「お米が届かなくてもいいので協力したい」との声が次々と寄せられ、急ピッチで準備。1口5万4千円に設定した出資金を23の企業や個人から集めた。
現在も農道がふさがり、行くことができない田んぼがある。地震前には出資者らを招いて田植えや稲刈りの体験会を開いていたが、今回は招待を控えた。島さんは「態勢が整えば再開してまた能登を盛り上げたい」と来年を見据えた。〔共同〕
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