芸人や俳優、テレビ番組の司会と幅広く活躍するタレントの松嶋尚美(なほみ)さん(52)は家庭に戻ると、子育てと介護を同時に担う現役のダブルケアラーだ。毎日新聞のインタビューに「すべてゼロからだった」と打ち明けた松嶋さん。それは3年前、急に始まった。
インタビュー詳報 「1ミリもできへんやろ」
松嶋さんは夫とともに中学1年生の長男(12)と小学5年生の長女(11)を育てる2児のママで、東京都内で暮らしている。
2021年12月、出身地の大阪で妹家族と暮らしていた足の不自由な母(87)が新たな家族に加わった。この3カ月前に妹が心筋梗塞(こうそく)で倒れたことがきっかけだった。
「ケアマネって何なん?」。当時は在宅の介護家族を支えるケアマネジャーの存在を含め、介護の知識はなかった。「24時間仕事」の介護と子育てに追われ、心身ともに疲れ切った時期もあったという。
今でも心配事は尽きないが、松嶋さんは「うちにおばあちゃんを迎えたことで、子どもたちが変わった。そんな成長にちょっぴりうれしくなる」と話す。
「あなたが壊れちゃいけない」。松嶋さんは1時間半に及んだインタビューで、ダブルケアの現実や当事者だから感じる課題、そして同じ境遇にある人に伝えたいメッセージを語った。【井手千夏】
ダブルケア
子育てと介護が重なる状況を指す。公式な定義はなく、研究者の間では広い意味として、家庭内で2人以上の介護などを抱えている状態にも使われる。この実態と課題を調査・研究している横浜国立大の相馬直子教授と英ブリストル大の山下順子上級講師が2012年に提唱した和製英語。毎日新聞が国の就業構造基本調査を基に独自集計した結果、ダブルケアに直面する人は17年時点で全国に少なくとも推計29万3700人いることが明らかになった。30~40代の働く世代が9割を占め、女性に集中している。高齢化や晩婚・晩産化が背景にあるとされている。
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毎日新聞社会部ダブルケア取材班のメール(doublecare@mainichi.co.jp)まで体験やご意見をお寄せください。
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