被爆体験者の救済を巡る、岸田文雄首相とのオンライン面談後、取材に応じる鈴木史朗・長崎市長(左)と大石賢吾・長崎県知事=長崎市尾上町の県庁で2024年9月18日午後4時16分、尾形有菜撮影

 長崎原爆に遭った被爆体験者の原告44人のうち15人のみを被爆者と認めた9日の長崎地裁判決を受け、被告である長崎市の鈴木史朗市長と長崎県の大石賢吾知事は18日、岸田文雄首相や武見敬三厚生労働相とオンラインで面談し、控訴を見送りたい意向を伝えた。市と県は法定受託事務として被爆者健康手帳の交付を担う立場。岸田氏は「厚労相と法相に判決を精査させ、しかるべき対応を検討させる」と返答したという。

 判決は、爆心地東側の旧矢上村、旧古賀村、旧戸石村(いずれも現長崎市)の3村に原爆投下後の「黒い雨」で放射性物質が降ったと認め、市と県に対し、旧3村にいた15人に被爆者手帳を交付するよう命じた。他の地域にいた原告29人の訴えは退けた。控訴期限は24日。

 オンライン面談後に取材に応じた鈴木、大石両氏によると、原告以外で3村にいた人も同様に救済することや、3村以外で原爆に遭った被爆体験者についても早急に救済することを併せて求めた。

 鈴木氏は「(原告15人を被爆者と認めた)判決は一つの大きな転機、ステップになり得る。これを契機に新しく(解決に)踏み出せれば」とし、大石氏は「まずは15人に手帳が交付されるよう控訴断念を強く求めたが、そこが終わりではなく、全ての被爆体験者が救済されるよう県と市で一体となって取り組む」と語った。

 鈴木、大石両氏と面会した岩永千代子原告団長(88)は「知事と市長が『救済する』と言ったことは明るい光だ。裏切ることはないと信じたい」と語った。【尾形有菜、園部仁史】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。