共同研究の協定書を手にする大分刑務所の今村守所長(左)と別府大の斉藤哲也教授=大分市畑中5で2024年9月11日午前11時41分、神山恵撮影

 大分刑務所は、受刑者の更生や再犯防止を目的に、刑務官と受刑者が対話する取り組みを始めた。両者が対等な立場で向き合い、受刑者の内省を促す。対話内容は、臨床心理学の専門家が検証し、結果を刑務官にフィードバックする。

 2022年に発覚した名古屋刑務所刑務官による受刑者への暴行事件を受けた組織改革の一環。殺人など重罪で刑期の長い収容者ら約300人を対象とする。

 受刑者1人につき、複数の刑務官が担当する形式を想定。相手を否定しない、話を遮らないといったルールの下、罪の意識や悩みなどを率直に話し合う。就労や福祉といった出所後の支援につなげることも狙う。

 国の犯罪白書によると、22年に刑法犯で検挙された16万9409人のうち、再犯率は約48%(8万1183人)と依然として高い。その一方で、25年6月施行予定の改正刑法では、懲役と禁錮を一本化する「拘禁刑」が新設され、受刑者の刑務作業が義務でなくなるため、対話のような立ち直りを促す取り組みに時間をかけられる環境が整うという。

 検証作業は、別府大との共同研究という形で、同大の斉藤哲也教授(臨床心理学)が28年9月まで実施する予定。協定の締結式で、斉藤教授は「受刑者と刑務官にどんな変化が生まれるか検証し、成果を社会に還元したい」と語り、同所の今村守所長は「一方的な指導ではなく、受刑者が再犯しないためにはどうしたらよいか考えたい」と話した。【神山恵】

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