家政婦兼介護ヘルパーとして住み込みで働いた後に急死した女性の労災を認めなかったのは不当として、東京都の70代の夫が国に処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が19日、東京高裁であった。水野有子裁判長は夫側の請求を退けた一審・東京地裁判決を取り消し、労災にあたるとの判断を示した。
一審判決などによると、女性は家政婦あっせんや訪問介護を手がける会社に登録。2015年5月、寝たきりの要介護者の利用者宅で7日間住み込みで働いた後に倒れ、翌日に死亡した。女性の1日あたりの労働時間は家事労働で14時間半、介護業務で4時間半の計19時間に上ったという。
夫は労働基準監督署に労災申請し、遺族補償の給付を求めた。労基署は家庭に直接雇われた家政婦は「家事使用人」として労働基準法が適用されないとする同法の規定を根拠に労災と認めない処分をした。
夫側は訴訟で、女性は会社の指示の下で家事と介護を一体的に行っていたと主張した。家事労働も会社の業務であり、家事使用人には該当しないなどと訴えた。
22年9月の一審判決は、家事労働は利用者の息子と女性が直接結んだ雇用契約に基づいて提供されていたと判断し、家事使用人としての業務とみなした。介護にあたった時間のみを検討対象とし、1日4時間半の労働は「著しく過剰とは言えない」として、死亡との因果関係は認められないと結論づけた。
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