21日、岸田総理大臣が「被爆体験者に対し、被爆者と同等の医療費助成を年内にも始める」と表明したことを受けて、大石知事と長崎市の鈴木市長は東京で会見を開き、支援策については前進したと一定の評価を示しました。
一方、原告の一部を被爆者と認めた長崎地裁判決については、政府の方針を受けて、県と市も控訴することを決めました。
「大変申し訳なく苦渋の決断」としています。
大石知事と長崎市の鈴木市長は21日午前8時過ぎ、岸田総理大臣と武見厚労大臣と面会し、被爆体験者訴訟の対応などについて意見を交わしました。
被爆体験者訴訟をめぐっては、9月9日、長崎地裁は原告44人のうち原爆が投下されたときに黒い雨が降った地域にいた15人を被爆者を認める判決を言い渡しました。
この判決に対し、岸田総理大臣と武見厚労大臣は、政府としては「控訴せざるを得ない」という判断を示しました。
その理由として、次の2点を挙げています。
【1】すでに確定している最高裁判決と今回の長崎地裁の判決で「黒い雨」が降ったとする証拠に対する考え方が異なっていること。
【2】2021年の広島高裁判決と異なり、同じ事情を持つ同様の地域に対する考え方が
示されていない。このため、手帳を交付する統一的な基準を作ることが難しく、被爆者援護法の公平な執行が困難である。
政府の判断を受け、県と長崎市は「上級審を踏まえたうえで被爆者健康手帳を交付すべき統一的判断ができれば、長崎でも手帳の交付が広がる可能性がある」として、控訴する決断をしたと説明しました。
一部の原告だけでなく全ての被爆体験者を救済するため、救済範囲の拡大につなげたい考えです。
大石知事と鈴木市長は、県と市が国と異なる対応をとって被爆者手帳の交付を行うことは難しいとして「被爆体験者の気持ちを思うと大変申し訳なく、残念な気持ちでいっぱい」「苦渋の決断だった」と述べました。
また、岸田総理が、全ての被爆体験者に被爆者と同等の医療費助成を年内にも始めると表明したことについては、大石知事と鈴木市長は「疾患に対する限定などがなくなるので支援の幅が拡大され、被爆体験者の健康不安に寄り添うものと考えている。その点についてはありがたい」と一定の評価を示しました。
近く、大石知事と鈴木市長から被爆体験者に直接話をする機会を設ける方針です。
今後も政府に対し、半径12キロの被爆地域の拡大や、広島と同様の新基準の適用などを求め、被爆体験者の一刻も早い救済に県と市が連携して取り組むとしています。
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