石川県で発生した記録的な大雨は、元日の能登半島地震で甚大な被害が出た被災地を直撃した。ハザードマップの浸水想定区域に建てられていた仮設住宅で被害が出ていることも明らかになってきた。
「自宅近くの仮設が浸水し、消防隊員がゴムボートで捜索活動をしていた」
こう証言するのは、輪島市山岸町のアパートに住む吉田ひとみさん(62)だ。
県などによると、山岸町には地震の被災者が身を寄せる計5カ所の仮設住宅が、ハザードマップで洪水の浸水想定区域(最大想定)に建っている。
山地が多い能登半島では建設用地の確保が難しく、災害リスクを伴うエリアに仮設住宅が建てられた経緯がある。
吉田さんによると、自宅アパートでは1階のドア付近まで浸水し、自家用車も水没していた。自室は停電している。
吉田さんは「地震からようやく少し生活が落ち着いてきた頃だったのに、どうしてこんなことになるのか」と嘆いた。
吉田さんは夫とともに伝統工芸「輪島塗」を手がける「吉田漆器工房」を営んでいる。元日の地震で市街地にあった自宅兼工房を失い、山岸町のアパートに身を寄せている。
21日午前は市内の仮工房で作業中、友人から「自宅の車が浸水しそうになっていて危ない」と連絡を受けた。
工房の外に慌てて出ると、周辺の道路も川のような水が流れていて移動できる状況ではなかった。雨が収まった後に帰宅すると、自宅周辺も冠水していたという。
吉田さんは「ライフラインの復旧にも時間がかかりそうで、今夜はどこで過ごせば安全なのか」と落胆した。
一方、山岸町と隣接する輪島市宅田町の仮設住宅も浸水被害が出ている。
近くに住む男性会社員(57)は21日午前7時ごろ、激しい雨音に気付いた。体験したことのない猛烈な雨が降りつけ、目を開けていられない状況だった。「市役所近くの広場や対岸の町が濁流にのみ込まれるのが見えた」と話す。
仮設住宅には警察や消防が近づけない状態だったといい、男性は「仮設に取り残された高齢者がいないか心配だ。正月の地震に続いて甚大な災害がまた来るなんて言葉にならない」と絶句した。【小坂春乃、竹中拓実、藤河匠】
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