「苦渋の決断だ」「大変申し訳ない」。長崎市の鈴木史朗市長と長崎県の大石賢吾知事は21日、首相公邸で岸田文雄首相らと面談した後、東京都内で記者会見した。被爆体験者の原告44人のうち15人について被爆者健康手帳の交付を市と県に命じた9日の長崎地裁判決に対し、国の方針に沿って控訴する考えを明らかにする一方で、複雑な心境を口にした。
市と県は法定受託事務として被爆者健康手帳の交付事務を担う。訴訟では被告として争う姿勢を示す一方で、訴訟外では国に被爆体験者の早期救済を求めてきた。鈴木市長と大石知事は判決後の18日、岸田首相、武見敬三厚生労働相とのオンライン面談で控訴を見送りたい意向を伝えていた。
21日の面談では、武見厚労相から控訴が必要な理由について説明を受け、岸田首相からは被爆体験者への医療費助成を拡大する方針が伝えられた。
鈴木市長は「国と異なる対応を取って手帳を交付することは難しい。大変申し訳なく残念な気持ちでいっぱいだが、控訴やむなしと判断した」と語った。大石知事は「上級審の判断を踏まえ、手帳交付の統一的な基準が確立すれば、長崎でも手帳交付が拡大することにつながる。救済範囲の拡大につなげるための苦渋の決断だ。被爆体験者の皆様には、控訴断念という結果にならず、心から申し訳ない」と述べた。
大石知事は「長崎でも降雨があったことを証明する資料の探索など一刻も早い救済に向けて、取り組みを進めたい」とも語った。
一方、医療費助成の拡大について、鈴木市長は「被爆体験者全体の救済が大きく前進した内容で、感謝したい」とし、大石知事も「被爆体験者の健康不安に寄り添うものだ。大変ありがたい」と評価した。
市と県は控訴期限の24日に福岡高裁に控訴する方針。【松山文音、日向米華】
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