新型コロナウイルスが感染症法上の位置づけで5類に移行して間もなく1年。日常が戻りつつある中、コロナ禍で必要とされた対策の多くがその役割を終えています。税金により大量に購入された備品は今、どうなっているのか。その行方を取材しました。

名取市 健康福祉部 加藤勤さん
「こちらが今回廃棄するワクチンになります」

4月2日、宮城県名取市の保健センターでは行われていたのは新型コロナワクチンの廃棄作業です。3月末、ワクチン接種を全額公費でまかなう「特例臨時接種」が終了。これを受け、名取市では使用しなかったおよそ1万回分のワクチンを廃棄することになりました。

名取市 健康福祉部 加藤勤さん
「医療廃棄物の箱に入れまして、専用の業者にお願いして引き渡す」

これで役割を終えたのがワクチン保管用の冷凍庫です。国はおよそ90億円をかけておよそ2万台を確保し、接種業務を担う全国の自治体などに無償で譲渡。県内にもあわせて243台が配置されました。
この冷凍庫をめぐって今、激しい争奪戦が繰り広げられています。国は去年12月、公費によるワクチン接種終了後の冷凍庫の取扱いについて「可能な限り有効活用をしてほしい」と売却を含めた判断を各自治体に委ねていました。
名取市は保有する3台の冷凍庫について、譲渡の方向でホームページで希望者を募ったところ、1カ月ほどで県内外9つの医療機関や大学などから希望が寄せられました。
最終的に県内の教育機関を優先し、仙台高専、尚絅学院大学、宮城大学に無償譲渡することを決めたといいます。

仙台高専 熊谷進准教授
「科学実験をやっているものからすると、この冷凍庫は結構魅力的というか…ワクチンで超低温冷凍庫を使うと聞いて『いつか欲しいな』ってみんな思っていた」

仙台高専は柴田町からも無償で冷凍庫を譲り受け、学生実験に活用しています。多くの人が欲しがるこちらの冷凍庫。気になるお値段は…。

名取市 健康福祉部 加藤勤さん
Q.これは高いんですか?
「これですか?私もネットで見たところ、60万から70万くらい。ぜひ学生さんの研究に役立ててもらえれば」

引き続き、同じ場所で活躍しているものもあります。
感染症の調査研究を行う仙台市衛生研究所。中で行われていたのは…

仙台市衛生研究所 微生物課 松原弘明課長
「仙台市内の医療機関から提供を受けました。コロナ陽性患者の咽頭拭い液を処理しまして、これからゲノム解析にかけるところです」

現在主流のオミクロン株に至るまで変異を続けながら猛威をふるってきた新型コロナウイルス。この施設では感染状況を把握するため、ウイルスの変異を調べるスクリーニング検査を2021年から始め、現在も月100件程度のペースで行っています。
その検査に用いられるのが「次世代シークエンサー」と呼ばれるこちらの装置。解析ソフトも合わせて1台2000万円です。全額、国の公費で賄われています。ウイルスが持つ塩基配列を可視化し、変異について調べることができます。
こちらは、仙台市内で採取された複数の検体を似たもの同士で分類した結果です。オミクロン株が変異した右上の集団がBA1、その下がBA2など、いくつかのクラスターが確認でき、その大きさによってどのような変異株が流行しているか見ることができます。
コロナ禍前は高価なゲノム解析装置は持っていなかったというこちらの研究所。導入された装置と得られた知見は「次」への備えにつながっています。

仙台市衛生研究所 微生物課 松原弘明課長
「当然、次の何かしらのウイルスによるパンデミックが起きた際も同様に変異株を探知するという仕事は必ず残ると思いますので、その時に必ず役に立つ技術だと思っています」

すでに活用されているものがある一方、備蓄が決まったものも…。

宮城県 保健福祉部 疾病・感染症対策課 大石広幸さん
「こちらが保管しているパルスオキシメーターになります」

何段も積まれた段ボール。中に入っているのは全てパルスオキシメーターです。
血液中の酸素飽和度を調べることができ、重症化を見分ける機器として、県が自宅療養者に貸し出していました。県によりますと、価格は平均3000円ほど。こちらも全額国庫から賄われています。
ピーク時の調達数は1万5000個ほど。そのうち実際に貸し出されたのは7900個で、700個ほどがいまだ返却されていません。

宮城県 保健福祉部 疾病・感染症対策課 大石広幸さん
「まだ返却がお済みじゃない方がいらっしゃいましたら、一度県までご連絡をいただければと思っております」

これも税金で購入された大切な備品。1万5000個のうち1万個は県内の医療機関に無償で提供されましたが、5000個は次のパンデミックに備え、保管されるといいます。
コロナ禍で必要とされた対策の数々…5類移行から間もなく1年、効果の検証と今後につながる活用が求められています。

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