能登豪雨で安否不明になっている石川県輪島市久手川町の中学3年、喜三翼音(はのん)さん(14)の家族は23日、自宅脇の塚田川の上流から下流まで、がれきをどかしたり、泥をかき出したり、懸命の捜索を続けた。父、鷹也さん(42)は「見つかったら抱きしめてあげたい」と声を絞った。
豪雨に見舞われた21日朝、翼音さん以外の家族は全員外出。午前9時40分過ぎ、鷹也さんがLINE(ライン)で連絡すると、2階の自分の部屋にいた翼音さんは「下が海のようになっていて逃げられない」「部屋のドアが開かない」と訴えた。午前10時過ぎ、連絡が取れなくなり、昼過ぎに鷹也さんが何とか戻ると、自宅の建物は基礎だけになっていた。
鷹也さんによると、翼音さんは優しく、気が利く性格。絵が得意で、中学の美術部で部長を務めている。豪雨の1週間ほど前には、修学旅行で大阪へ行った。鷹也さんは「楽しい話をしたばかり」と振り返る。
祖父の誠志さん(63)は輪島塗の職人で「輪島朝市」に店舗を構えていた。翼音さんは中学1年の頃から店の接客を手伝い、誠志さんは「しっかりしていて、朝市のメンバーにも知られていた」と話す。
元日の地震による火災で朝市の店舗は焼け落ち、誠志さんは金沢市に近い同県野々市市に拠点を移した。金沢市内の高校への進学を目指していた翼音さんは、祖父を手伝いながら通学すると語っていたという。
鷹也さんが仕事のため家を出た21日午前7時半過ぎ、川の水位は普段とさほど変わらなかった。鷹也さんは「流木でせき止められたのか、一気に増水したのだろう。朝にもっと水位が上がっていたら、早く逃がしてあげられた」と悔やむ。
23日、鷹也さんは自宅周辺で、消防隊員らと一緒に手掛かりを探し続けた。「今はとにかく、できることを全てやりたい」〔共同〕
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