丹下健三が1958年に設計した愛媛県今治市公会堂の内観。市は「建築美術のまち」として魅力を発信する考えだ=同市で2023年7月29日、松倉展人撮影

 愛媛県今治市は2025年度採用の「地域おこし協力隊」について、過去最多の30人を募集する。ここ数年は10人ほどを募っていたが、「地域の課題解決により密接に取り組む全庁を挙げたプロジェクト」と位置づけ、採用者数を一気に3倍に引き上げた。「建築美術の街・今治の魅力創生」「脱炭素と地域経済循環のまちづくり」など、取り組みに応じて15の募集要項を設定。10月8日まで受け付けている。

 地域おこし協力隊は、過疎地への移住促進や地域活性化を目的に総務省が09年度に始めた制度。最長3年間、自治体の地域おこし事業に携わる。24年度は、報償費・経費込みで年間1人当たり上限520万円の特別交付税措置がある。

丹下健三が設計した愛媛県今治市庁舎=愛媛県今治市別宮町1で2022年7月26日、松倉展人撮影

 今治市は12年度から隊員を受け入れ、24年度で通算70人となった。21年度からは年齢上限を廃止して間口を広げている。少年期を今治で過ごした世界的建築家、丹下健三(1913~2005年)の作品が市内には七つある。これらを生かし、25年度は「建築美術のまち今治」の魅力再生と世界発信に取り組む隊員を新たに募集するほか、島しょ部のスポーツ活動▽鈍川(にぶかわ)温泉郷のにぎわい構想推進▽有害鳥獣対策と動物愛護対策――など具体的な使命を担う隊員を約20人募集。自発的に地域活動に従事してもらう従来の「フリーミッション」の隊員を約10人募集する。

 同市では協力隊の任期終了後も、イノシシを使って皮革の製品化や骨でだしをとる猪骨(シシコツ)ラーメンの開発、柑橘(かんきつ)酵母のパン製造など、地域の素材を生かした商品作りなどに取り組む「卒業生」が多い。市の智内真登香(ちない・まどか)移住定住政策室長は「得意分野を生かしていただきながら、今治に定住してもらうのが一番の願い。全庁で支えたい」と話している。

 総務省によると、23年3月末現在の同市の隊員定住率は76・6%。愛媛県全体の66・7%、全国の64・9%を大きく上回っている。四国では、高知県66・7%▽香川県62・7%▽徳島県62・3%――だった。【松倉展人】

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