国が指定する援護区域外で長崎原爆に遭った被爆体験者44人(うち4人死亡)のうち15人(うち2人死亡)を被爆者と認めた9日の長崎地裁判決を不服として、被告の長崎市と長崎県は24日、福岡高裁に控訴した。原告も敗訴した29人のうち28人が24日に控訴した。
地裁判決は、爆心地東側の旧矢上村、旧古賀村、旧戸石村(いずれも現長崎市)にのみ「黒い雨」で放射性物質が降ったとして3村にいた15人に被爆者健康手帳を交付するよう市と県に命じ、他の29人の訴えは退けた。
岸田文雄首相と武見敬三厚生労働相は21日、鈴木史朗市長と大石賢吾知事に面会。被爆体験者への医療費助成を被爆者と同等まで拡充する意向を表明したが、地裁判決について、原告敗訴が確定した先行訴訟で認められなかった証拠を使って原告を被爆者と認めた点などを不服として控訴の方針を伝達し、市長、知事とも受け入れる意向を示していた。
24日に原告と面会した大石知事は「控訴という苦渋の決断をした。皆様の心情を考えると非常につらい」とし、鈴木市長は「被爆者として認めてほしいという皆様のお気持ちからすると本当につらい決断だった」と語った。敗訴原告の一人の岩永千代子原告団長(88)=長崎市=は「勝訴原告は手帳が交付されることを心待ちにしていた。知事も市長も控訴しないと信じていたので、納得できない」と語った。【尾形有菜、樋口岳大】
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