2022年、知床半島沖で観光船が沈没した事故で、運航会社の社長、桂田精一容疑者(61)が逮捕されてから、2024年9月25日で1週間が経ちました。

 ずさんな安全管理体制が徐々に浮き彫りになってきました。

 「午前11時30分前です。桂田容疑者を乗せた車が釧路地検に向かいます」(田中うた乃記者、9月20日)

 業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで逮捕送検された観光船KAZU1を運航していた「知床遊覧船」社長の桂田精一容疑者(61)。

桂田容疑者の逮捕から1週間―

 事故当日、荒天が予想されるなか、運航管理者として安全を確保する義務を怠り船を沈没させ、乗客乗員26人を死亡させた疑いがもたれています。

 2022年4月23日、知床半島沖で沈没した観光船「KAZU1」。

 午後から天候が荒れる予報のなか、斜里町ウトロ漁港から乗客乗員26人を乗せウトロ漁港を出航。

 その後26人は冷たい海に投げ出され、20人が死亡、6人が行方不明となりました。

 これは事故発生から10日後の現場付近の海底の様子。

 魚の群れをかいくぐると、白く塗装された船が…。

 観光船「KAZU1」です。

 「KAZU1」は水深110メートル以上の水温わずか2℃の海底に沈んでいました。

 カメラは客席の周辺を重点的に捜索。

 すると、そこには黒いリュックサックが…。

 のちに行方不明となった男性の所持品だったことが分かり、家族のもとに戻されました。

家族に直接の謝罪はせず

 取り返しのつかない事故を引き起こしてしまったにもかかわらず、事故直後、すぐに公の場に姿をみせなかった桂田容疑者。

 結局、会見を開いたのは事故から4日後でした。

 「この度はお騒がせして大変申し訳ございませんでした」(知床遊覧船社長 桂田精一容疑者)

 桂田容疑者は事前に用意した台本通りのシナリオで10秒間謝罪。

 会見以降、公の場での謝罪は避け続けていた桂田容疑者ですが、ただ1度だけ家族に直筆の手紙を書いていました。

 「どんなにお詫び申し上げても許されることではなく、より悲しみ増す方がいらっしゃることは重々承知していますが、私からお詫びの気持ちを伝えさせていただきます」(手紙から引用)

 しかし、家族に直接の謝罪がされることはありませんでした。

 一方で、家族に寄り添う人もいます。

 月命日の23日に、献花を続ける男性です。

 「一番は事故の風化を防ぎたい。忘れ去られないように。大事なことだと思っています」(元部下の杉浦登市さん)

謝罪を進言するも… 『自分は罪がない』という言動

 当時、桂田容疑者が経営する宿泊施設で働いていた杉浦登市さん。

 事故後、被害者家族と接する中で、桂田容疑者に何度も謝罪を進言してきました。

 「私からは何度か『乗船者家族に謝ってください』と伝えたことはあります。『分かっているよ』『やるから』『しているから』という反応ですね。日頃の言動からは、『自分は罪がない』ということが、感じられました」(杉浦さん)

運航は任せきりだった桂田容疑者

 これは、UHBが入手した2019年の知床遊覧船の経営計画書です。

 「都会の人々に自然の大切さを感じてもらおう」

 父親から宿泊施設の経営を引き継ぎ、観光船などの事業を拡大してきた桂田容疑者。

 さらに、新たな船の取得も計画されていたことが分かります。

 しかし、桂田容疑者は海や船のことを知らず、運航は船長や従業員に任せきりだったといいます。

 「(観光船事業は)たくさんの需要があって、特別な観光ということで、非常に興味を持っていたんだと思う。ただ、現場に行って船を確認する姿はあまり見たことがないですね」(杉浦さん)

 強風注意報が出され、1.5メートルのち3メートルの高い波の予報が出る中での出航判断は妥当だったのか、事故発生後の会見では…

 「安全管理規程には数値は出ていない」(桂田精一容疑者)

 自社の規程にないとしていた桂田容疑者ですが、実際には航行中に風速8メートル以上、波高1メートル以上になるおそれがある場合は出航を中止しなければならないと定められていました。

 また、運航管理者にも関わらず事務所に不在で、ずさんな安全管理が明らかに。

 事故から2年5か月を前に海上保安庁は「証拠隠滅の恐れがある」として逮捕に踏み切りました。

桂田容疑者の逮捕に被害者家族は…

 逮捕を受け、今も行方不明の乗客・小柳宝大さん(当時34)の父親は…

 「やっと前に進んだなと思いましたね。仏壇の隣の写真、それとKAZU1から上がってきたリュックに『桂田が逮捕されたぞ』とすぐに報告しました」(現在も行方不明 小柳宝大さんの父親)

 事故の10日後に水中カメラが捉えた黒いリュックは宝大さんのものでした。

 事故後発見されたカメラには、事故直前の知床の写真が残されていました。

 「(発見されたものは)宝大の代わりですね。宝大は帰ってきませんから。“身代わり”だと思っています。(桂田容疑者には)自分の悪かったことを反省してもらいたい」(小柳さん)

 元妻と当時7歳の息子が行方不明の帯広市の男性です。

 息子が通っていた小学校から8月、学習道具などが返却されました。

 「学級通信、鍵盤ハーモニカ、工作…(事故1年後にもらった)3年生の教科書はまだ一度も開いていない。本来であれば今は4年生だった」(元妻と息子が行方不明の男性)

 成長した息子に会いたい。先日、自分の誕生日に見た夢に息子が出てきたといいます。

 「(夢の中で息子は)ごはんを食べるのに箸を使うのが下手で手伝ってあげて。それから一緒に遊んで。自分の誕生日だったので会いに来てくれたのかな。起きた時に『会いたいな』と思いました」(元妻と息子が行方不明の男性)

 逮捕から1週間。

 桂田容疑者の運航管理者としての責任を問う調べが続いています。

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