全国的なコメ不足やコメの値上がりが続き、生活困窮者らの食料支援などに取り組むフードバンクを運営するNPO法人「セカンドハーベスト名古屋」(名古屋市北区)も、支援用のコメの不足に頭を悩ませている。窮地に立たされる同法人を助けようと、三重県菰野町の農家、萩寛文さん(43)は約840キロもの貴重な新米を寄付した。
同法人は行政と協力し、愛知、岐阜、三重の生活困窮者らに寄付などで集まったコメや缶詰、菓子などを詰めた「食料支援箱」を提供している。支援箱には5~10キロほどのコメも詰められ、2023年には約7000個もの支援箱を発送した。
しかし、コメ不足の影響でここ数カ月で寄付は激減。8月末時点の在庫は前年比47%減の約6・3トンまで落ち込んだ。
主食となるコメは支援の中でも重要な物資で、支援箱を受け取った人へのアンケート調査でも、「助かった食品」としてコメと回答した人は8割超に上った。同法人の前川行弘理事長は「主食のコメさえあれば、なんとか食いつなぐことができるから重宝されるのだろう」と話す。
コメを寄付した萩さんは、20年から毎年800キロから1トンほどの新米を同法人に寄付している。法人スタッフから飢えに苦しむ子供たちの存在などを聞き、人ごととは思えなかったという。
今年はコメ価格が前年の約2倍に高騰。農家としては売り上げアップも見込める中、萩さんは「(価格が)安い高いで方針は変えず、続けていくことに意味がある」という思いで、今年も変わらずに寄付することを決めた。「これからも寄付をする余裕を持てるよう、農業経営を頑張る励みになる」と笑顔を見せた。
コメ不足が叫ばれる中での寄付に同法人の松岡篤史さん(69)は驚きを隠せない様子で「困窮者に新米を食べてもらえるのはうれしい。しっかり活動し、萩さんの思いを届けたい」と意気込む。そして「その他の食料もまだまだ足りない」と寄付を呼び掛けている。【荒木映美】
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