1966年、静岡県清水市(当時)で一家4人が殺害された強盗殺人放火事件の犯人として死刑判決が確定していた袴田巌さんの再審裁判で、9月26日に無罪判決が出されました。
刑訴法・再審の条文は一度も改正されず
再審とは間違った判断で有罪判決を受けたえん罪被害者を救済する制度ですが、500以上の条文からなる刑事訴訟法のうち再審に関する条文は19条しかありません。
また、その条文は過去75年にわたって一度も改正されていないのです。
日本弁護士連合会は1959年から再審支援をはじめ、2年前には再審法改正実現本部を設置しました。
2024年3月、再審法を改正するために全国会議員の約半数が参加する議員連盟が発足するなど改正へ向けた動きが活発化しています。
3月19日には再審法改正を目指すイベントが都内で開かれました。
イベントには袴田さんの姉・ひで子さんも参加し、集まった市民 約2500人に「弟の経験を何とかいい方法に利用してほしい」と訴えました。
姉・ひで子さん:
47年間、巖が拘置所で頑張った。その頑張りを再審法に。ぜひ皆さんの力で改正なり訂正なりしてもらいたい
再審法の問題点について
なぜ再審法の改正を目指すのか。問題点について整理していきます。
日本弁護士連合会や議員連盟が指摘する問題点は大きく2点あります。
1点目が証拠開示に関するルールがない、2点目は検察による特別抗告が認められているということです。
なお、裁判員裁判は裁判所の命令で証拠を開示しなければならないルールがあります。
ー2点の問題点についてどう思いますか?
橋下徹 弁護士:
ずっと言われてきたことですが、法律になりませんでした。反対しているのは検察側だけでなく、裁判所側も再審に道を開きすぎると負担が大きすぎると言う意見が多いです。日本は3審制なので再審を認めると「4審制」になってしまうと。
日弁連の鴨志田弁護士が言っていたことで大きなことがありました。それは数百件もある再審請求のうち半分くらいが”なんちゃって再審”だと。
弁護士側も再審請求をむやみにやると司法全体として負担を被ってしまう。ですから、弁護士側もそこを整理したうえで再審法というのを提案していかなければいけない。
それから国会議員も本気で動かないといけないですね
ジャーナリスト・鎌田靖 氏:
もういい加減 変えなければいけない。今回の件でわかるのは検察が証拠開示をしない、不服申し立て、つまり抗告を何度もするということ。
しかし、検察は違法なことをしているわけではなく、定められたルールに則ってやった結果がこれなので、定められたルールがダメだということでそれが最大の問題です。ですからルールをきちんと作っていくことが大事です。
えん罪の時にいつも思うのは、裁判所、検察、被告、弁護側それぞれ相互不信があるように感じます。それが放置された結果、今回のような事態を招いていると思う
再審決定後も検察の抗告が
-袴田事件のケースでは2点の問題点はどのような影響が?
福島流星 記者:
再審開始決定につながった証拠が開示されたのは事件発生から40年以上が経った2010年です。それまで検察は「法的根拠がない」として証拠開示を拒み続けてきました。
2014年に再審開始決定が出されましたが、検察が抗告したことで審理が続き最終的に再審開始が確定するまで9年かかりました。こうしたことから「証拠開示のルール化」と「検察の抗告を認めないこと」の2点について国会議員が改正を訴えています
橋下徹 弁護士:
今回の件で衝撃的だったのは2010年の証拠開示の理由が検察の「上の方針が変わったから」という点で「正直それかよ!」という感じでした。民主国家において属人的な判断で変わるのはおかしいですよね、ルール化しないとダメです。
それと検察側は、集めた証拠は有罪立証のためだけに使うのではなく、被告人のためにも使うという意識をもたないと証拠開示は進みません
ここまで袴田事件再審判決を受け再審法についてお伝えしました。
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