移送される井上浩二容疑者(後部座席中央)を乗せた車両=北九州市小倉北区大門1の福岡県警小倉北署で2024年9月26日午後4時35分、井土映美撮影

 2017年5月に北九州市小倉北区のアパート「中村荘」が全焼し、6人が焼死した火災で、現住建造物等放火容疑などで逮捕された元住人の無職、井上浩二容疑者(56)が、火災当日の現場周辺などを捉えた防犯カメラ映像の一部について「(映っているのは)自分」と認めていたことが捜査関係者への取材で明らかになった。逮捕前の調べに認めたという。井上容疑者が入居当時、管理会社側とトラブルになり、周囲に放火をほのめかしていたことも判明。福岡県警は当日の足取りや動機の解明を慎重に進めている。

 火災は17年5月7日午後11時過ぎに発生。入居者のうち6人が焼死した他、5人が重軽傷を負った。

 中村荘に防犯カメラはなかったが、県警は現場周辺などにある70台以上の防犯カメラ映像を押収し、精査。出火前後に中村荘の正面玄関近くを行き来する不審な人物が映っていた。さらに複数の映像をつなげて足取りを追う「リレー捜査」を続けたところ、井上容疑者の当時の自宅に行き着いたという。

 捜査関係者によると、この映像を逮捕前の捜査で示したところ、井上容疑者は一部について自分だと認めたという。県警はリレー捜査の信用性を補強する本人供述だとみている。

 また、井上容疑者は、火災の約1年前となる16年6~7月、生活保護を受けるために1カ月ほど中村荘に入居していた。その際、管理会社側の担当者に注意を受けるなどし、周囲に不満を漏らしていたという。県警は延べ600人以上の関係者に聞き込みを重ねており、井上容疑者が知人に対し「(中村荘に)火を付けてやろうか」という趣旨の発言をしていたことを確認したという。

 一方、出火現場を捉えた防犯カメラ映像など井上容疑者と放火を結びつける直接的な証拠はない。井上容疑者は逮捕後の調べに「そのようなことはやっていません」と容疑を全面的に否認しており、県警は慎重に客観証拠を積み重ねている。

 県警は27日、井上容疑者を現住建造物等放火と住居侵入の容疑で福岡地検小倉支部に送検した。【河慧琳、井土映美】

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