那覇市と浦添市で唯一の公営火葬場「いなんせ斎苑」(浦添市)が逼迫(ひっぱく)し、火葬待ちが常態化している。6~7日待ちが平均で、12日待ちとなったケースも。他市町村で火葬するなど影響が波及している。遺体安置室の賃料やドライアイス代がかさんだり、葬儀の日程が確定しないなど遺族の負担は大きい。関係者は「沖縄県が主体となった予約や利用状況の管理体制の構築が必要」「2040年まで死者数の高止まりが続く。県内の火葬場が足りない」と改善を訴える。(社会部・玉城日向子)

 同斎苑は計8炉ある火葬炉のうち、2炉の取り換え工事をしている。稼働している6炉で火葬できるのは1日12件で、常に予約が埋まった状態が続く。28日現在は6日待ちで、担当者によると7月以降、1週間待ちとなることもあった。

 北部や中部には大きな火葬場がない。南部広域外の市町村住民について、同斎苑は連絡から3日以内に空きがあれば受け入れている。だが空きはなく、受け入れできない状況だ。

 同斎苑の担当者は「遺族の心情も重々理解でき、加速させたいのはやまやま。だがコロナ禍で炉を無理させたことがたたり、改修も考えて今がぎりぎりのライン」と明かす。「都市部の那覇と浦添の火葬を1カ所で担うのはマンパワーの限界。火葬場が増やせないのであれば、県が主体となった管理体制を構築してほしい」と訴えた。

 葬儀会社からも火葬待ちの解消を求める声が上がる。県霊柩(れいきゅう)葬祭事業協同組合の中山俊幸副理事長は「遺族の経済的、精神的な負担が大きい」と懸念する。予約が取れずに北部で火葬したものの、高齢となった遺族が火葬場に出向けず、葬儀会社が遺骨を受け取ったこともあった。

 管轄外の火葬場で依頼した場合、通常料金の約4倍の費用がかかることも。また、遺体安置室の賃料は1日1万~8万円、遺体保管用のドライアイス代も1日約1万円かかる。火葬の予約が取れない場合、安置だけでも数十万円の出費が必要になる。

 自宅に安置したとしても、1週間以上経つと傷みが進む上、弔問客も絶えないなど、遺族の精神的負担が大きい。

 同斎苑は年内に8炉体制へ戻るが、来年度から新たに2炉の取り換え工事が始まる。

 中山副理事長は「高齢化による多死社会となり、死者数は増え続ける。県内の火葬場では足りず、この現状では対応できない」と行政に早急な対策を求めた。

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