農村部に住む高齢者の移動手段の確保策として、郵便局の集配車を活用する貨客混載の実証運行が1日、北海道上士幌町で始まった。町が運行主体となる公共ライドシェアで、11月末まで実施する。この日は早速、町中心部でゲートボールを楽しんだ高齢女性が約5キロ離れた自宅まで利用し、「助かります」と笑顔を見せた。
実証運行は次世代移動サービスMaaS(マース)の地域推進事業で、国土交通省が実施する「共創・MaaS実証プロジェクト」として、日本郵便と連携して取り組む。通常業務中の郵便局のドライバーと車両を住民の「足」として活用する試みで、事業費約120万円は国の同プロジェクト補助金を充てる。
対象は市街地から3~12キロ離れた居辺地区の住民。市街地と同地区を結ぶ「高齢者等福祉バス居辺線」が運行しない火、木、金曜日に実施する。
福祉バスを利用するために町が住民に貸与しているタブレット端末から予約を受け付け、委託を受けた上士幌郵便局が業務中の車両や運行可能な車両を配車するシステムで、利用料はタクシー料金の8割相当の片道1000円に設定している。
この日、町高齢者生きがいセンターでゲートボールを終えた大西フミさん(90)が、初の利用者として居辺地区の自宅まで活用した。普段は福祉バスの利用や家族の送迎で同センターに来ているという大西さんは、運転手を務める近藤岳男局長に促されて集配車の助手席に乗り込み、「乗り心地もいいです。ありがたい」と話した。
上士幌町では既に市街地を中心に自動運転バスが2路線で定期運行するなど、町主導の公共交通網の維持に向けた取り組みが先駆的に行われている。2020年12月には同郵便局の無償協力で5日間、郊外の郵便ポスト前から住民を集配車に乗せ、市街地の病院や商店などに運ぶ実証運行も行った。
郵便局に委託料を支払って実施する今回は、住民の需要状況を把握すると同時に、郵便局側の業務と委託運行を同時に行うための課題などを詳細に検証するという。
大西さんが乗り込む現場を確認した竹中貢町長は「運転手不足などに直面する中、地方に住む人の移動手段の確保は行政の基本的サービス。地域に根ざした郵便局との連携は住民の信頼性、安心感につながる」と期待した。【鈴木斉】
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