能登豪雨に襲われた石川県の能登半島北部で深刻な問題となっているのがトイレだ。各地で大規模な断水が続く中、元日の能登半島地震で活躍した移動式の「トイレトレーラー」が再び被災地に駆けつけている。
1月の地震後、輪島市の市立東陽中学校に1台のトイレトレーラーが派遣された。今回の豪雨で、車両の床上まで泥が積もるなどの被害を受けた。その後、清掃され、被災者だけでなく支援団体や学校職員など多くの人が利用している。
ほかにも、輪島市や珠洲(すず)市で、地震後から活動を続けていたトレーラーが要請を受けて期間を延長したり、活動を終えたトレーラーが再派遣されたりして、9月末時点で計12台が被災者らの生活を支えている。
トレーラーの派遣は「全国の自治体が1台ずつ常備し、緊急時に派遣し合おう」と、一般社団法人「助けあいジャパン」(静岡県)が提唱し、自治体に呼びかけた。
2018年に静岡県富士市が第1号を導入した。「災害派遣トイレネットワーク」として、今年9月末時点で22自治体が参加している。トレーラーは、水と電気が途絶えた状態でも1200~1500回の使用が可能だ。
災害時、水が流れず他人の汚物があふれたトイレは不衛生で、感染症を引き起こしかねない。夜間に真っ暗な場所に設置された仮設トイレだと、性的被害に遭うのではという不安がある。トイレを我慢するため飲食を控えて脱水症状になったり、災害関連死につながったりする恐れもある。
このため、トレーラーは全室個室で男女別の動線を作れるよう、両側面に出入り口を配置している。ネットワークの矢野忠義事務局長は「汚物まみれのトイレは人の尊厳を傷つける問題。医療関係者らがおむつをはいて治療している現場もあった」と語る。
能登半島地震の時には、参加自治体数を大幅に超える80カ所以上に出動要請があった。だが、支援を続けるためには自分たちで給水するだけでなく、月に1回の点検や修理もする必要がある。
矢野さんは「数がまだまだ足りない。ネットワークのつながりがあってこそ活動が成り立つ。このつながりを広げていかなければ」と話した。【芝村侑美】
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