東証プライム上場の電子部品メーカー大手「TDK」(本社・東京都)から営業秘密の研究データを不正に取得したとして、警視庁公安部は4日、元社員で無職の男性(65)=千葉市=を不正競争防止法違反(営業秘密領得)の疑いで書類送検した。
男性は事件直後に退社しており、警視庁はデータを転職活動に利用しようとしたとみて調べている。
書類送検容疑は2023年6月ごろ、当時勤務していたTDKの成田工場(千葉県成田市)で、同社が営業秘密に指定していた電子部品の研究データを、社有パソコンからメールで自身のアドレス宛てに送信したとしている。警視庁は認否を明らかにしていない。
捜査関係者によると、男性が不正に取得した機密情報の中には電子部品「MEMS(メムス)」の開発データが含まれていた。メムスは、携帯電話や家電のセンサーなどに使われており、世界中で開発競争が繰り広げられている。
男性は再雇用の研究員としてメムスの情報にアクセスできる権限があった。在職中から転職活動をしており、23年6月に退社したが、再就職はできなかった。その後、情報の流出に気付いたTDKが警視庁に相談。持ち出された機密情報の第三者への漏えいは確認されていないという。
警視庁は今年5月、TDKから別の営業秘密を不正に取得したとして、秋田県にあるTDKの研究施設に勤務していた元社員の60代の男性2人を不正競争防止法違反(営業秘密領得)の疑いで書類送検。いずれも不起訴処分になった。
TDKは4日、ホームページに「情報管理体制の一層の強化および従業員に対するコンプライアンス教育の徹底を図り、再発防止に努めていく」とのコメントを出した。【木下翔太郎】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。