幼い子どもを持つ親を「子持ち様」とやゆし、強く批判する声がSNS(ネット交流サービス)上で広がっている。子持ちであることを理由にした振る舞いが非常識だったり、周囲に迷惑だと受け止められたりするケースが多いが、これほどまで嫌悪される背景に何があるのか。
SNSの書き込みに賛否
「子持ち様が『お子が高熱』とか言ってまた急に仕事休んでる。部署全員の仕事が今日1・3倍ぐらいになった」。2023年11月、X(ツイッター)のユーザーがそんな投稿をしたところ、表示回数が3000万回以上に上り、賛否両論が巻き起こった。
また、同4月にスープ専門店「スープストックトーキョー」が全店で離乳食を無料で提供すると発表した際には、「提案者が子持ち様なんだろうな。もう行かない」「ただでさえ狭くてカウンターしかない店舗も多いのに、ベビーカーで突撃されたらたまらんわ。さよならスープストックトーキョー…」などの反応が寄せられた。
そのほか、SNS上には「子持ち様の穴をうめるために独身女が働かざるを得なくなる」「子持ち様の近くに座るとリクライニング倒せないだけでなく、手伝いまで強要される」といった投稿があふれている。
子持ちではない女性も書き込み?
「これって、『なんで私たちがあなたの子どものために犠牲にならなくちゃいけないのよ』っていう議論ですよね」。そう語るのは報道番組で活躍してきたジャーナリストの安藤優子さんだ。
SNSには子持ちではない女性が書き込んでいるとみられるケースが散見され、子どもがいない安藤さんは女性の間で「分断」が起きていると危惧する。「経済的な問題などさまざまな理由で結婚や出産を選択しない人が増え、既婚と未婚、子持ちと子持ちでない人の分断が深刻化しています。さらに多くの職場では男性優位の考えが根強く残り、ただでさえ女性は不公平感を覚えているのに、子どもがいない人は子育てを理由に休んだ同僚の仕事までカバーせざるを得ない状況も生まれています」
結婚や子育て希望者が萎縮する恐れ
夫婦共働きが増えたことも「不公平感」を加速させていると考えられる。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、18歳未満の未婚の児童がいる世帯のうち母親が仕事をしている世帯の割合は04年に56・7%だったが、22年は75・7%と4分の3を超えた。母親が「正規の職員・従業員」を務めている割合も04年の16・9%から22年は30・4%に伸びている。
1児を持つ拓殖大の佐藤一磨教授(労働経済学)は「共働き世帯は保育園や学童保育などを利用して子育ての負担を『外部化』する必要がありますが、子どもが急に発熱した場合などはどうしても職場の同僚に影響が及んでしまう。『子持ち様』批判は今後も拡大する可能性があり、行政が中心となって対策をしなければこれから結婚や子育てを希望する人たちを萎縮させる恐れがあります」と警鐘を鳴らす。【御園生枝里】
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