豊田市博物館の内覧会で報道陣に説明する建築家の坂茂さん=愛知県豊田市で2024年4月25日、兵藤公治撮影

 愛知県の豊田市博物館を設計した日本人建築家・坂茂(ばんしげる)さん(66)に話を聞いた。建築分野の国際的な賞「プリツカー賞」を2014年に受賞。1995年の阪神大震災以降、紙管などを利用した建築や被災地支援活動でも知られる。

 ――設計で苦心した点は。

 ◆谷口吉生さんの設計した傑作・豊田市美術館が隣接している。20世紀を代表する金属とガラスを直線的に使ったモダニズム建築。隣に建築するのは大きなプレッシャーだったが、リスペクトしながら設計した。21世紀はすべての領域で環境問題が大事なテーマになっており、豊田市で伐採されたスギやヒノキを最大限に使った。21世紀のこれからあるべき建築や環境の方向を対比的に提起した。

 また、美術館前面のランドスケープ(景観)は米国を代表するピーター・ウォーカー事務所が手がけており、博物館と連続するようにデザインしてもらった。

 ――博物館はどんな施設であるべきか。

 美術館や博物館は閉鎖的な施設になりがちだ。そのうえ所蔵品の多くが収蔵庫に収められてしまう。豊田市博物館では集合展示として巨大なガラス張りの展示棚を設け、耐震の役割も果たす。イベントなどに呼応して施設の外と中が連続するように盛り上がる「えんがわ空間」を設計した。みなさんに楽しんでもらうだけでなく、安心・安全の場所も目指す。

 ――災害対策も考慮しているのか。

 ◆豊田市博物館は、蓄電池付き太陽光発電装置を備え、発災後72時間は電気を供給できる。国の高いエネルギー基準を満たした建物に与えられる「ZEB Ready(ゼブレディ)」認証を取得した国内初の博物館だ。文化の拠点としてだけでなく、市役所が被災した際には防災拠点となる。【聞き手・山田泰生】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。