注目の裁判が始まりました。自宅で妻を殺害した罪に問われている元長野県議会議員・丸山大輔被告の裁判員裁判の初公判で、被告は「妻を殺害したのは私ではありません」と、起訴内容を否認しました。

2021年9月、塩尻市の自宅兼酒蔵で妻・希美さんの遺体が見つかった事件。

丸山大輔被告(2021年9月):
「本当に残念な結果になってしまったなと思う。警察の皆さんに協力して捜査の進展を見守っていきたい」

丸山被告は事件の翌日、取材にこう応えていました。

自身は「県議会の会期中で長野市の議員会館にいた。自宅には行っていない」と話していました。

その後も議員活動を続け事件から1年後のインタビューでは―。

丸山大輔被告:
「犯人像みたいなのが全く分からないので何とも言いようもない。怒りも湧きようがない状況だけど、何かしら自分がやってしまったことに対する罪悪感みたいなのがあるでしょうから、自分から出てきてくれればそれに越したことはない」

この2カ月後、警察が殺人の疑いで逮捕。現職県議の逮捕に衝撃が広がりました。

その後、丸山被告は殺人の罪で起訴されました。

起訴状によりますと、丸山被告は2021年9月、塩尻市の自宅兼酒蔵で妻の希美さん(当時47)の首を何らかの方法で圧迫し殺害したとされています。

事件から3年。

10月16日、長野地方裁判所で開かれる初公判。

午前10時の開廷を前に一般の傍聴席41席の抽選には300人以上が並び、関心の高さがうかがえました。

丸山被告は、黒いスーツに青のネクタイ姿で入廷し、落ち着いた様子で前を向いて座っていました。

検察が起訴状を読み上げた後、裁判長から間違いないか聞かれ、丸山被告は「妻を殺害したのは私ではありません」と、起訴内容を否認しました。

逮捕後から一貫して無罪を主張してきた丸山被告。

裁判の争点は「被告が犯人かどうか」という「犯人性」です。

初公判では検察側・弁護側双方が冒頭陳述を行いその主張は真っ向から対立していました。

■動機

検察側は「被告は当時、別の女性と不倫関係にあり、離婚を考えていたが妻の実家から4000万円の借金があり、離婚すると返済を迫られる恐れがあった。女性と交際するには妻が死亡する以外に選択肢が無かった」としました。

これに対し、弁護側は、「不倫はあったが、被告と妻の関係は悪くなく、会社の経営や選挙活動の支援でかけがえのない存在だった」などとして、「殺害する動機は無い」と主張しました。

■犯行前後の動き

丸山被告は事件前の夜、同僚議員と会食し、議員会館に戻ったあとの「二次会」に顔を出し、その後、同僚議員に「明日の一般質問の原稿が未完成なので作成する」と告げて、議員会館の自室に戻ったとされています。不倫関係の女性に「今から一般質問の原稿を作る」とSNSを送ったということです。

検察側は「被告人がノートパソコンを起動させてUSBメモリを挿入したが、原稿データを開かず1文字も入力していなかった。原稿はすでに完成済みだった」と主張し、「自室で原稿作業をしていたと装うためのアリバイ工作だった」と指摘しました。

弁護側は「一般質問の原稿は完成していなかった。翌日の議会の一般質問で使う原稿を仕上げるための構想を練って就寝した」として、「アリバイ工作をした事実はない」としています。


■防犯カメラ映像について

検察側は、「車で議員会館を出発、大通りを避けて細い道を通り、高速道路も使用せずに自宅に向かった」などと指摘。防犯カメラ映像などで立証するとしました。

一方、弁護側は、「被告が議員会館の外にいたのを誰も見ておらず、防犯カメラに映った車も被告の車ではない」とし、飲酒もしており、「被告は議員会館から移動していない」と主張しました。


■現場の状況

現場の状況については、検察側が「遺体に抵抗した形跡や逃げようとした形跡がない」「金庫しか、物色されておらず、事前に場所を知っていた人物の犯行」「現場にあった靴跡が、被告のテニスシューズのデザインと一致した」などとして、「被告人の犯行」と指摘しました。

一方、弁護側は、「寝ている子どもたちに気づかれずに妻を呼び出すのは困難」「妻がどのような方法で殺害されたかもわからず、足跡も一致しているとは言えない」として、「第三者による犯行の可能性がある」と主張しました。

今後の裁判はどのように進められるのでしょうか。

再び、裁判所前から中継です。今回の事件は、犯行を裏付ける直接的な証拠が乏しく、検察側は被告が犯人であると推認させる複数の事実を積み重ねて、犯人性を立証する方針です。

裁判員にわかりやすいよう、「動機」や「現場の状況」など4つのテーマに分けて審理を進めます。

16日は、冒頭陳述の後、テーマの一つ「被告の所在・移動状況」について審理が行われました。検察側が安曇野市や麻績村で撮影された防犯カメラの映像を示しながら、被告の移動ルートを説明したのに対し、弁護側は、「映っているのは被告の車ではない」と真っ向から否定していました。

証人として、防犯カメラ映像の解析にあたった警察官も出廷し、時刻補正の手法などについて尋問も行われました。

公判中、丸山被告は熱心にメモを取ったり、弁護士と度々、話をしていました。検察側の証拠の防犯カメラ映像が廷内に流れると、「おっ」とリアクションを取る場面もありました。また、妻の話になると、上を見上げる様子もありました。

17日の裁判も、「被告の所在・移動状況」について証人尋問が行われる予定です。

裁判は、検察側と弁護側で主張が全面的に対立していて、23日間に及ぶ審理が予定されています。

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