「新さぬき弁殺人事件」公演に向けて練習に励む劇団マグダレーナの団員たち=高松市で2024年10月18日午後8時37分、佐々木雅彦撮影

 1923年の関東大震災直後に香川県の行商団が惨殺された「福田村事件」を題材にした演劇「新さぬき弁殺人事件」が27日、高松市で上演される。2023年公開の映画「福田村事件」は日本アカデミー賞を受賞するなど注目を集めたが、演劇を上演する同市の劇団「マグダレーナ」は00年に「さぬき弁殺人事件」として公演していた。今回は集団を狂気に走らせる深層心理に焦点を絞り、誰もが持つ差別意識を前面に押し出した。

 福田村事件は大震災直後の9月6日に千葉県福田村(現野田市)で起きた。香川県の被差別部落出身の薬の行商団15人が朝鮮人と疑われたことがきっかけで、9人が自警団に惨殺された。

 しかし事件は長く歴史に埋もれたままだった。00年前後に真相究明の動きが本格化。事件現場近くに03年、慰霊碑が建立された。

 マグダレーナの脚本・演出を手がける大西恵(けい)さん(85)は1999年ごろに事件を知って衝撃を受け、脚本を書くために取材を始めた。前回の「さぬき弁殺人事件」では、行商団の1人が福田村の船頭に「くそアホが、何ぬかしよるんじゃ」という意味の讃岐弁「くそぼっこが、なんぬかっしゃ」と言ったのが朝鮮人と疑われた原因と想定した。

 今回の「新さぬき弁殺人事件」ではこれらの設定を踏まえた上で、事件が長年、表に出てこなかった理由について仮説を盛り込んだ。大西さんは「自警団が行商団を獲物を狩るように殺したのは、差別意識が暴走したからだと思う。この公演を見て、自分の深層心理に向き合ってもらえれば」と話している。

 高松市サンポートのサンポートホール高松第2小ホールで27日午後2時、午後6時の2回公演。観劇料980円。【佐々木雅彦】

関東大震災での朝鮮人虐殺

 関東大震災後、朝鮮人による「放火多し」「井戸に毒薬を投入」といったデマが広がり、朝鮮人虐殺が相次いだ。一時は軍隊や警察、新聞がデマをあおった。国の中央防災会議専門調査会報告書によると、震災による死者10万人以上のうち、虐殺されたのは1000人~数千人とされる。朝鮮人が最も多く、中国人や日本人も少なくなかった。言葉がうまく話せない人や方言が強い人も襲われた。

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