福岡市で「市民ランナーの聖地」とも呼ばれる大濠公園で、ランナーらが置き引きや車上荒らしに遭う被害が相次いでいる。猛暑が和らぎ、マラソン大会に向けて練習するランナーが増えつつある中、貴重品などを身に付けていない運動中を狙われている。県警幹部は「夜間で周囲が暗く、人目につきにくい時間帯は特に注意が必要」と呼びかける。
10月中旬の午後6時ごろ、大濠公園を訪れると、多くの市民ランナーが汗を流していた。パリ・パラリンピック女子マラソンで銅メダルを獲得した道下美里選手の練習拠点としても知られ、池の外周約2キロに設けられたジョギングコースは足の負担を少なくするようゴムチップが敷かれている。
だが、この公園で9月以降、盗難被害が7件相次いだ。中央署によると、いずれも午後6時以降の暗くなる時間帯で、ランニング中の人などの持ち物が狙われ、このうち6件は自転車やバイクにひっかけた荷物が盗まれた。被害届を出していない人もいるとみられる。
公園には仕事帰りに立ち寄る人もおり、現金の他、ワイシャツやスーツのズボン、革靴などを盗まれた例もあった。福岡市中央区の会社員、阿部直樹さん(42)は「大濠公園には週4、5回、仕事終わりに来る。貴重品は身につけているが、着替えはいつも自転車のかごに入れている」と話した。
県営の大濠・西公園管理事務所によると、園内には2023年7月にロッカーが1台設置されたが、事務所職員は「利用が少ないと感じているので料金案内など周知が必要かも」と話す。週2回ほど練習に来るという福岡市南区の会社員、佐伯祐治さん(40)はロッカー設置を知らなかったといい、「ロッカーが増えれば需要はあると思う」と求めた。
相次ぐ盗難被害に、公園管理事務所は駐車場やフェンスなどに注意を喚起するポスターを掲示。中央署も警戒を強め、10月17日午後10時ごろ、ウオーキング中の女子大生(19)が自転車そばに置いていたリュックサックを盗んだとして会社員男性(35)を現行犯逮捕した。男性は「欲しい物があればいいなと思った」と容疑を認め、同署が余罪についても調べている。
スポーツの秋で、今後もランナーの公園利用は続くとみられる。中央署幹部は「運動中でも貴重品や荷物はミニバッグに入れるなどして肌身離さず、荷物から離れる時はロッカーなどを利用してほしい」と注意を呼びかけている。【栗栖由喜】
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