奈良県明日香村で見つかった江戸時代の水争いに関連した地図を初公開する特別展「水と暮らしの風景史 古地図と景観がひらく飛鳥」が奈良文化財研究所(奈文研)飛鳥資料館(同村奥山)で開かれている。資料館周辺を描いた古地図で、江戸期と現代の風景を見比べることができる。12月1日まで。
公開されたのは、天和2(1682)年作成「下八釣村(しもやつりむら)・小山村百貫川水論立会絵図(こやまむらひゃっかんがわすいろんたちあいえず)」(高さ86センチ、幅206センチ)。農業用水となる飛鳥川支流百貫川の水を巡り、下八釣村(橿原市下八釣町)と小山村(明日香村小山)間で起きた争いの裁定を請うため、京都町奉行に提出された絵地図だ。
同地図の複写図3点も、明日香村小山地区で保存されている。特別展準備で奈文研が今春、小山地区を調査したところ、原図となる天和2年作成の同地図を発見した。
飛鳥地域の水争いは戦後、紀の川(和歌山県)の水を県内に引く「吉野川分水」が整備されるまで続いた。昭和11(1936)年8月8日付の大阪毎日新聞(現毎日新聞)奈良版には、小山地区住民が百貫川の水利権を巡って奈良地裁に提訴した記事が掲載されている。
特別展は古地図の他にも古文書など計約30点を展示。会場には現代の飛鳥地域の立体地図も設置されている。竹内祥一朗研究員(歴史地理学)は「日本の原風景といわれる飛鳥地域。水とともに生きてきた人々の暮らしに思いをはせてほしい」と話している。
月曜休館(祝日は開館し、翌火曜休館)。一般350円、大学生200円、高校生・18歳未満・70歳以上無料。問い合わせは飛鳥資料館(0744・54・3561)。【皆木成実】
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