厚生労働省が、厚生年金の企業規模要件や賃金要件撤廃に向けて調整するのは、全ての労働者に社会保険を適用する「勤労者皆保険」を目指しているからだ。高齢者や女性の就労が進み、働き方が多様化する中、社会保障を手厚くする狙いがある。国民民主党は所得税がかかり始める「年収103万円の壁」を解消し、現役世代の手取りを増やしたい考えだが、同じ年収の壁でも制度の目的はそれぞれ異なる。
厚労省はこれまでパートら短時間労働者への厚生年金の適用拡大を進めてきた。2016年に企業規模500人超の事業所を対象としたのを手始めに、企業規模要件を段階的に引き下げてきた。今年10月からは50人超まで対象となり、次期年金制度改正で撤廃する方針だ。
厚生年金に加入すれば老後の年金給付は増える。例えば、年収120万円の人は月9000円程度の厚生年金保険料が発生するが、25年払い続ければ65~80歳までの年金給付額は約220万円増える。
年収の壁問題の根幹には、保険料を納付しなくても保障を受けられる「第3号被保険者」の存在がある。連合は10月に廃止を求める方針を打ち出したが、厚労省が廃止に向けて具体案をまとめられるほど議論は詰まっていない。年末にまとめる次期制度改正案で制度のあり方について方向性を示せるかも課題だ。【宇多川はるか】
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